研究課題/領域番号 |
17K02722
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
言語学
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
勝川 裕子 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (40377768)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2018年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2017年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 物語構築 / 注視点 / ヴォイスの選択 / 名詞句構造 / 数量詞 / 中国語 / 教育文法 / 視点 / 視点の移動 / 中間言語 / 横断的分析 / 可能表現 / 現代中国語 / 文法シラバス |
研究実績の概要 |
今年度は前年度に得られた調査結果に基づき、中国語における「視点」の在り方と構文選択の特徴について、考察対象となり得る①授受表現、②移動表現、③受身表現、④感情表現のうち、授受表現を取り上げ、個別に考察を行った。 具体的には、漫画描写という調査手法を採用し、中国語で物語を紡ぐ際に「注視点」がどこに置かれ、それによりどのようなヴォイス表現が選択されるかについて、適宜日本語と対照しながらその実態を観察した。従来、日本語は<固定注視点型>であるのに対し、中国語は<移動注視点型>であると指摘されてきたのに対し、本研究の調査結果では、日中両言語においてそれほど明確な傾向差は見られないことが判明した。一方で、中国語ではコマ間だけでなく、同一コマ内であっても登場人物一人一人に対し描写を行うケースが日本語より多く、頻繁に注視点の移動がみられることを指摘した。この現象は構文選択にも影響を与えており、日本語では埋め込み文を多用することにより注視点を固定するのに対し、中国語では複文構造が選択されることにより、注視点の移動が反映されることを指摘した。 また、今年度は中国語の名詞句構造の文法的特徴について、語順と意味機能を中心に考察を行った。中国語では「那个戴眼鏡的人」(あの眼鏡をかけた人)と 「戴眼鏡的那个人」(眼鏡をかけたあの人)はいずれも統語的に成立し,意味的にも大差ないように感じられるが、文脈の中で用いられる場合、両者は任意に選択されるものではない。本研究では、中国語の連体修飾節における(指)数量詞の位置やその前後に配置される修飾成分の意味機能は、文脈に応じて選択され活性化するものであり、(指)数量詞の位置というのが、その前後に配置される修飾成分の意味機能を見極める指標となり得ることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、今年度も現地調査を行うことはできなかったが、オンライン経由によるデータの収集及び整理は順調に行うことができた。 一方で、調査内容の選定において課題が指摘され、調査項目を調整の上、再度調査を行う必要が生じている。また、今後行うべき学習者調査については、サンプルとする対象者の選定と調査実施の点において課題が残っており、今年度中に調査実施に至ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
調査内容の選定において課題が判明したため、調査項目を調整をした上で、母語話者調査を再度実施する予定である。そこで得られたデータを整理した上で、今年度考察対象とした受身表現以外にも、授受表現、移動表現などを取り上げ、中国語と日本語における<注視点>の移動と構文選択の関係について考察を進める。 また、日中両言語における<注視点>の特徴を踏まえた上で、日本人中国語学習者の中間言語に見られる視点表現の特徴について調査を行い、目標言語である中国語の言語実態と彼らの中間言語との間にどのような乖離が存在するか明らかにしたい。
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