研究課題/領域番号 |
17K03411
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
社会法学
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
森 克己 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 教授 (60343373)
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研究分担者 |
坂中 美郷 鹿屋体育大学, スポーツ・武道実践科学系, 講師 (10574056)
国重 徹 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 教授 (50225174)
高橋 仁大 鹿屋体育大学, スポーツ・武道実践科学系, 教授 (50295284)
内田 良 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (50432282)
山田 理恵 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 教授 (60315447)
濱田 幸二 鹿屋体育大学, スポーツ・武道実践科学系, 教授 (90244277)
中本 浩揮 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 准教授 (10423732)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2018年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2017年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | イギリス / スポーツ・インテグリティ / コーチング / チャイルド・プロテクション / DBS / 指導者 / 虐待 / 犯罪歴 / アスリート保護 / スポーツ団体 / IOC / セーフガーディング / NSPCC CPSU / Duty of Care / UK Coaching / 5つの柱 / インテグリティ / IOC Toolkit / ガイドライン / 体罰 / 虐待防止 / 不正経理 / 八百長 / ドーピング / CPSU NSPCC / スポーツ統制団体 / スポーツ / スポーツ倫理 / ガバナンス体制 |
研究実績の概要 |
本研究は、世界で最も先進的とされる、18歳未満の子どもを指導者による虐待等から保護する child protection(以下 CP と略)、ドーピング、不正経理などスポーツ団体の不適切な運営、八百長や違法な賭博、人種差別等の問題のイギリスでの取組を考察し、日本のスポーツ界において、スポーツ・インテグリティを実現するために示唆を得ることを目的とする。 今年度は、イギリスのCP制度の特徴の一つである、子どもと関わることに不適切な大人を子どもへのスポーツ指導から排除するDBS(Disclosure and Barring Service)制度について考察した。このDBS制度は、イギリスの機関Disclosure & Barring Service(制度名と同じ)によって構築されており、スポーツ分野に関するガイドラインDBS Checks in Sport-Working with Children(以下「DBSガイドライン」と略)が策定されている。その結果、イギリスのDBS制度では、仕事(job)ではなく申請者の役割(role)に応じて、犯罪歴等の有無で不適格かどうかが判断され、また、スポーツ分野において「子どもと規制された活動」に従事する役割につく場合は、4つのレベルのDBSチェックのうち、最も厳しい、禁止表を伴う高度なチェックの証明書が必要になる。また、イギリスの女子体操の事件が示しているように、DBS制度は、過去に子どもと関わることに不適切な犯罪歴のある指導者を排除する制度なので、犯罪歴がない指導者は、DBS制度の網にかからない。したがって、日本でDBS制度を導入すれば、教師等の体罰が根絶されることにはならない。そのため、日本で制度構築する場合、イギリスのCP制度のように、専門機関を設立した上で、あらゆるスポーツ団体が関わる包括的な制度とする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの感染拡大の影響により、昨年度に引き続き研究期間を延長した。 コロナ禍のため、元々の研究計画では対面での実施を予定していた国際シンポジウムが全面オンラインでの開催となるなど、本研究でもコロナの感染拡大の影響を受けてきたが、昨年度までの研究により、アスリート保護に関するIOCやイギリススポーツ団体での取組や国際連携による研究実績等が明らかになっただけでなく、日本においてアスリート保護の制度を構築するに当たっての留意点等が確認された。 また、本年度は、子どもと関わることに不適切な犯罪歴をもつ大人を子どものスポーツ指導から排除するイギリスのDBS制度について考察した。その結果、近年イギリスでは、女子体操選手に対する指導者による虐待事件が発生し、同事件の指導者は犯罪歴がなかったため、子どもへの指導から排除されなかったこと、DBS制度は犯罪歴のない指導者による虐待は防止することができないことから、アスリートへの虐待防止の特効薬ではないと捉えられていることがわかった。したがって、今後日本でスポーツ分野でDBS制度を導入することを検討するに当たっては、同制度がアスリート保護の万能薬ではないことを踏まえた検討が必要であること等が研究成果として得られた。 以上のことから、コロナ禍の影響を受けてきたが、これまで得られた研究成果から、上記のような評価となった。
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今後の研究の推進方策 |
スポーツ・インテグリティの問題については、IOCもドーピングとの闘い、競争の操作の防止、スポーツにおけるハラスメント及び虐待の防止を取り組むべき課題に挙げ、その中でもアスリート保護の問題を近年最も重視している。その一環として、IOCは、国際競技連盟(IF)、各国のオリンピック委員会(NOC)に対して、アスリート保護の専門家であるSafeguarding Officerを配置することを推奨し、Safeguarding Officerの資格を認定するためのオンラインでの研修制度を2021年9月に開始した。また、研究の分野でも、アスリート保護の国際的な研究が進展している状況にある。 以上のことを踏まえ、今後は、IOCなど国際的なスポーツ団体によるアスリート保護の動向や国際的なアスリート保護の研究動向を国際学会等に出席することにより考察し、さらには、イギリスでのCP制度の現地調査を実施したい。 また、日本のスポーツ団体へのアンケート調査等、科研費による研究で当初計画していてまだ実施できていないことについて、今年度の成果を踏まえた形で、実施したいと考える。 研究成果については、研究代表者が代表を務めるアスリート・セーフガーディング研究所のウェブサイトにも掲載することとしたい。
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