研究課題/領域番号 |
17K03433
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
刑事法学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井上 宜裕 九州大学, 法学研究院, 教授 (70365005)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2017年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 保安処分 / 保安監置 / 再犯予防 / 刑事法学 / 制裁論 / 再犯防止 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、各保安処分の対象者別効果を測定し、総合的再犯予防策の具体化を指向するものである。2022年度は、これまでの研究を踏まえて、社会的反作用の対象者別効果の検討に着手する予定であったが、計画していた海外調査が新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止となり、資料収集にも困難が生じる事態となった。 そのため、2022年度も、前年度同様、収集済みの資料を中心に、可能な限りオンライン等を駆使して資料を追加し、これらの分析を行うこととした。そこで、フランスにおいて、2018年から2022年までの計画及び司法改革に関する2019年3月23日の法律第2019-222号で提示された、刑罰改革の内容を今一度精査し、新たに設けられた保護観察制度の問題点を抽出した。 保護観察付執行猶予(SP)の要はその運用にある。今次の保護観察制度改革の理念がいかに妥当性を有していようとも、実務においてそれが実現できなければ、画餅に帰すことになる。例えば、強化された保護観察付執行猶予(SPR)の運用は、最も危惧される点の1つである。強化された保護観察付執行猶予(SPR)においては、処遇の個別化を図るため、綿密な調査及び集中的な監視が予定されている。これらは、その多くを刑事強制(CP)から受け継いだものである。刑事強制(CP)が機能不全に陥り、消滅するに至ったのは、制度的複雑さもさることながら、運用コスト、とりわけ、人的資源の不足であった。そうであるとすれば、重点的な予算措置及び人員配置がなされない限り、強化された保護観察付執行猶予(SPR)も刑事強制(CP)と同じ運命を辿る可能性が高い。この点も含めて、フランスにおける保護観察制度の運用状況について、今後も注視していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、海外調査ができなかったのが大きな理由である。それに伴い、海外文献、資料の収集に支障が出た点も進捗状況が芳しくない理由に挙げられる。 本研究は、各保安処分の対象者別効果を測定し、総合的再犯予防策の具体化を図ろうとするものであるが、2019年度までに、各保安処分の対象者別効果測定の前提となる制度概要及び運用状況を精査し、比較検討の基本的視座を獲得することができた。 2020年度は、既に入手した資料を基に、本研究と関連すると思われる、少年刑事司法法典の動向を精査し、併せて、刑罰法改革に関する2019年法に検討を加えた。 しかしながら、2021年度、2022年度とも、コロナウィルスの影響により、予定していた海外調査が実施できなかったことから、必要な資料の拡充ができなかった。とりわけ、制度運用面でのヒアリング等ができず、オンラインを駆使して可能な限りカバーしようと試みたものの、十分な成果は上げられなかった。それ故、当初の研究計画からは後れを取っているといわざるをえない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、まさしく本研究の最終年度であり、2021年度及び2022年度に十分対応できなかった点を拡充しつつ、成果を上げたいと考えている。即ち、これまでの研究成果を踏まえた上で、各保安処分の法的性質及び他の措置との関係の明確化を図りつつ、各保安処分の対象者類型の分析、及び、対象者類型ごとの効果測定を具体的に展開する。 まず、フランスにおける、刑罰及び少年刑事司法をめぐる動向も射程に取り込みながら、刑罰と保安処分の関係、多様化した社会的反作用をめぐる理論的展開及びその運用状況等について精査する。 その上で、各保安処分の対象者類型の分析、及び、対象者類型ごとの効果測定を行い、具体的に、少年、高齢者、精神障害者、身体障害者等のカテゴリー別の特性について、詳細に検討を加える。 上記検討を経て、最終的に、各保安処分の刑事司法全体における位置づけを明確にした上で、再犯予防の実質化、そして、総合的再犯予防策の構築を目指す。 なお、本研究の推進方策として、研究会報告及び学会報告を最大限活用する。研究の進捗状況及び暫定的結論を各研究会で報告、質疑応答を通じて各会員から示唆をえる予定である。これにより、多方面からの意見を吸収し、本研究を効率的に進めていきたいと考えている。 ただ、2023年度、新型コロナウィルスの感染状況は収束しつつあるとはいえ、依然予断を許さない状況であることには変わりない。渡航自体は可能となっても、訪問受け入れ先の事情により、十分な対応がなされない懸念もある。これまで同様、不測の事態に備えつつ、オンラインによる情報収集等、善後策を講じながら、柔軟に対応するつもりである。
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