研究課題
基盤研究(C)
研究成果の一つは、Bereavement Risk Assessment Tool日本語訳版の一定の有用性を確認したことである。全国の救命救急センターを対象とした調査では、遺族支援の実施施設は17.9%であり、看護管理者の69%は必要だが現状として難しいと認識していた。全国のホスピス・緩和ケア病棟を対象とした調査では、遺族支援の実施施設は82%で、実施上の困難として時間的な余裕やケア提供者へのトレーニング、組織体制が不十分であることが挙げられた。豊中市保健所での遺族支援事業は、市民が安心して利用できるとともに、精神疾患のハイリスク者に対して継続的支援ができる点で有用であることが示された。
本研究の学術的意義の一つは、遺族のニーズやリスクのアセスメントに着目し、アセスメントツールの実用性を検討したことである。また、救命救急センターやホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアの実態を明らかにしたことは、わが国での遺族支援のあり方を検討するための学術的な基礎資料であるといえる。そして、10年以上に及ぶ豊中市保健所における遺族支援の実践研究は、コロナ禍での新たな取り組みも含め、一定の成果を生み出しており、多様なニーズやリスクを有する遺族を対象とした多層的な心理社会的支援の一つのモデルとして、社会的な意義は大きいと考えられる。
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