研究課題/領域番号 |
17K05427
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
夏梅 誠 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (90311125)
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研究分担者 |
岡村 隆 関西学院大学, 理工学部, 教授 (30351737)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2017年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | AdS/CFT双対性 / ホログラフィック双対性 / 超弦理論 / ブラックホール / 非平衡物理 / カオス / 素粒子論 / 超伝導 / 量子カオス / ホログラフィック超伝導 |
研究実績の概要 |
本研究では,超弦理論のAdS/CFT双対性を強結合系に応用することを目的としている.強結合系での理論的な計算はこれまで困難であったが,AdS/CFTによると,強結合の場の理論はブラックホールと等価だとされ,ブラックホールによる強結合系の解析が可能になった.このため,AdS/CFTは超弦理論にとどまらず,現実世界を解析する上で強力な手法になってきている.本年度は,pole-skippingの研究を行った. 本年度は以前から引き続き,”pole-skipping”の研究を行った.pole-skippingは,我々が発見した有限温度グリーン関数の新たな普遍的な性質である.運動量空間での有限温度グリーン関数を考える.このグリーン関数は,複素運動量空間の特定の点,松原周波数(周波数が負の純虚数で温度2πTの倍数)では一意に定まらない.この性質は普遍的であり,AdS/CFTによれば様々なグリーン関数で成立する.また,特別なケースとして,量子多体カオスも含まれる. この現象は,これまでブラックホールで議論されたが,ブラックホール以外の時空でもpole-skippingが存在することを確かめた.例として”AdSソリトン”と呼ばれる時空を調べた.ブラックホールはゲージ理論の非閉じ込め相に対応するが,この時空は閉じ込め相に対応する.そのため,mass gapが存在し,グルーボールのmassスペクトルが計算できる.その結果,特定の状態が欠落しており,それがpole-skippingによることを突き止めた.pole-skippingの物理的意味はいまだにわかっていないが,ブラックホールの場合,pole-skippingの一部はカオスと解釈されている.一方,ブラックホールでない時空の場合,状態の欠落として解釈できるようである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい課題に取り組んだため,申請書に記載した研究計画からはやや遅れているものの,新しい課題での研究成果が多数出た.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,これまでもしばしば調べてきた「ホログラフィック超伝導」の研究に取り組む.ホログラフィック超伝導は,AdS/CFTで議論されている系の一つで,超伝導を表す.この系はAdS/CFTでもっとも調べられている系の1つだが,基本的な問題さえ未解決である. たとえば,この系が超伝導をあらわすなら,ギンツブルグ・ランダウ(GL)理論として表されるはずだが,いまだにそのGL理論が同定されていないままである.これは,ホログラフィック超伝導は物質場を含め多くの場を含み,それらが非線形に結合しているため,解くのが難しいことが挙げられる.このため,幅広く研究されているにもかかわらず,多くの結果は数値的にしかわかっていない. そこで,ホログラフィック超伝導の解析解を求め,GL理論を厳密に決定する.この研究により,ホログラフィック超伝導とGL理論が等価であることを示す.
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