研究課題
基盤研究(C)
鉄をベースとした合金の中には,線膨張係数が小さいインバー効果や負の熱膨張がみられるものがある.インバー効果の最新の理論では,体積収縮に対してFe-Fe間の磁気揺らぎがNiのそれと比べて大きく増大することで,特異な体積弾性率となることが報告されているため,本研究では,X 線吸収分光により熱膨張の異常の起源を原子間の結合の観点から実験により解明した.その結果,Fe周りの原子間距離がNiと比べて長く,また体積弾性率が小さいという,Fe周りの局所構造の特殊性を実験的に見出すことに成功した.現在,逆モンテカルロシミュレーションにより合金中の原子対の配置の3次元的な可視化を進めている.
インバー合金のほぼゼロの熱膨張は,1897年の発見から120年以上が経過したが原子レベルでのその原因が分かっていなかった.理論的にはFeの磁気体積効果の重要性が以前より報告されたが,その実験は未達成であった.本研究のX線吸収分光を用いた元素選択的な局所構造解析により,今回初めてインバー合金の特異な磁気体積効果がFe-Fe間の原子間距離の伸長・収縮によって生じていることを見出した.面心立方格子中のFeの磁気状態には大きな磁気体積効果が期待されていたが,その特長が構造が乱れた合金中においても実現していることを見出しており,意義ある結果といえる.
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High Pressure Research
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