100%ナノセルロース結晶からなる高強度繊維の紡糸

• 研究課題/領域番号: 17K05991
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 配分区分: 基金
• 応募区分: 一般
• 研究分野: 高分子・繊維材料
• 研究機関: 信州大学
• 研究代表者: 荒木 潤 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10467201)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2020-03-31
• 研究課題ステータス: 完了 (2019年度)
• 配分額: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円); 2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円); 2018年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円); 2017年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
• キーワード: セルロース / ナノウィスカー / 繊維 / 湿式紡糸 / ヤング率 / 破断強度 / 配向度 / 化学架橋 / セルロースナノウィスカー / 結晶配向度 / 弾性率 / 強度 / 引張強度 / 高強度繊維 / ナノセルロース / 架橋

研究成果の概要

セルロースナノウィスカーの水懸濁液を湿式紡糸することで100%セルロースナノウィスカーのみからなる繊維を紡糸した。凝固浴溶媒、電解質の種類と濃度、紡糸原液濃度を変えて紡糸を検討した。X線回折は繊維内部のナノウィスカーの配向を示した。繊維の弾性率はウィスカーの配向度に依存するが強度は依存しないことがわかった。紡糸した繊維を一度水洗し再び風乾すると弾性率と強度が増加した。元素分析から、凝固浴内の電解質(Ca2+)がナノウィスカーの表面荷電基をイオン架橋している可能性が示された。ナノウィスカー間を架橋するとやや破断強度が低下するものの破断時伸びが増加する繊維を調製できた。

研究成果の学術的意義や社会的意義

繊維の力学物性は用いる高分子の結晶化度に大きく依存する。非晶を加水分解して結晶のみを残したセルロースナノウィスカーのみから繊維が形成できたことは100%結晶からなる繊維の調製を意味し、また微結晶の集合体であることによりしなやかさも備えている。100%結晶からなる繊維はこれまでに実現されたことがなく画期的であり、軽さの割に鉄やガラス並の強度を持つセルロース結晶の利点を生かした材料創成の先駆けとなる。

研究成果

• [雑誌論文] Wet spinning of cellulose nanowhiskers; fiber yarns obtained only from colloidal cellulose crystals (2020)
  • 著者名/発表者名: Jun Araki, Masahiro Miyayama
  • 雑誌名: Polymer 巻: 188 ページ: 122116-122116
  • DOI: 10.1016/j.polymer.2019.122116
  • 査読あり
• [雑誌論文] Surface Modifications of Cellulose Nanocrystals and Their Applications (2019)
  • 著者名/発表者名: Jun Araki
  • 雑誌名: 紙パ技協誌 巻: 73 号: 1 ページ: 63-68
  • DOI: 10.2524/jtappij.73.63
  • NAID: 130007621723
  • ISSN: 0022-815X, 1881-1000
  • 査読あり
• [雑誌論文] Comparison of Methods for Quantitative Determination of Silver Content in Cellulose Nanowhisker/Silver Nanoparticle Hybrids. (2018)
  • 著者名/発表者名: Jun Araki, Yasuhiro Hida
  • 雑誌名: Cellulose 巻: 25 号: 2 ページ: 1065-1076
  • DOI: 10.1007/s10570-017-1640-z
  • 査読あり
• [雑誌論文] Determination of sulfur and sulfate half-ester content in cellulose nanocrystals: an interlaboratory comparison (2018)
  • 著者名/発表者名: Linda J Johnston, Zygmunt J Jakubek, Stephanie Beck, Jun Araki, Emily D Cranston, Christophe Danumah, Douglas Fox, Haifeng Li, Jun Wang, Zoltan Mester, Audrey Moores, Karen Murphy, Savelas A Rabb, Alan Rudie and Chady Stephan
  • 雑誌名: Metrologia 巻: 55 号: 6 ページ: 872-882
  • DOI: 10.1088/1681-7575/aaeb60
  • 査読あり
• [雑誌論文] Production of Ultrafine Dry Powders of Surface-intact and Unmodified Cellulose Nanowhiskers via Homogenization in Nonpolar Organic Solvents. (2017)
  • 著者名/発表者名: Jun Araki, Toshihiko Arita
  • 雑誌名: Chemistry Letters 巻: 46 号: 9 ページ: 1438-1441
  • DOI: 10.1246/cl.170588
  • NAID: 130006067878
  • 査読あり
• [雑誌論文] Acid- or photo-cleavable polyrotaxane: Subdivision of supramolecular main-chain type polyrotaxane structure induced by acidolysis or photolysis. (2017)
  • 著者名/発表者名: Jun Araki, Yuta Honda, Yasuhiro Kohsaka
  • 雑誌名: Polymer 巻: 125 ページ: 134-137
  • DOI: 10.1016/j.polymer.2017.08.002
  • 査読あり
• [学会発表] 銀ナノ粒子吸着セルロースナノウィスカーをフィラーに用いた複合材料の力学物性および抗菌性能 (2020)
  • 著者名/発表者名: 小坂十理之、野村隆臣、荒木 潤
  • 学会等名: 第70回日本木材学会大会
• [学会発表] ホヤセルロース表面へのPEG結合による立体安定化と銀ナノ粒子複合体の調製 (2020)
  • 著者名/発表者名: 上田哲平、荒木 潤
  • 学会等名: 第70回日本木材学会大会
• [学会発表] 化学架橋によるセルロースナノウィスカー繊維の力学物性向上の試み (2019)
  • 著者名/発表者名: 宮山昌大、荒木 潤
  • 学会等名: 第69回日本木材学会大会
• [学会発表] スライディンググラフトコポリマーの固体-固体相変化温度制御 (2019)
  • 著者名/発表者名: 森本早貴、高坂泰弘、太田和親、荒木 潤
  • 学会等名: 第67回高分子学会年次大会
• [学会発表] セルロースナノウィスカー湿式紡糸繊維の架橋による物性の変化 (2019)
  • 著者名/発表者名: 宮山昌大、荒木 潤
  • 学会等名: 平成31年度繊維学会年次大会
• [学会発表] ポリロタキサン誘導体を用いた新規固体－固体相変化材料の熱物性 (2019)
  • 著者名/発表者名: 森本早貴、荒木 潤
  • 学会等名: 平成31年度繊維学会年次大会
• [学会発表] セルロースナノウィスカーの有機溶媒懸濁液から紡糸された繊維の力学物性 (2019)
  • 著者名/発表者名: 清水崇史、荒木 潤
  • 学会等名: セルロース学会第26回年次大会
• [学会発表] 銀ナノ粒子担持セルロース/PVA 複合材料の調製 (2019)
  • 著者名/発表者名: 小坂十理之、荒木 潤
  • 学会等名: セルロース学会第26回年次大会
• [学会発表] Cellulose Nanowhiskers. Promissing Biomass-Based Nanomaterials. (2019)
  • 著者名/発表者名: Jun Araki
  • 学会等名: 11th International Symposium on High-Tech Fiber Engineering for Young Researchers
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] 非水条件下におけるセルロースナノウィスカー繊維の化学架橋 (2019)
  • 著者名/発表者名: 清水崇史、荒木 潤
  • 学会等名: 2019年繊維学会秋季研究発表会
• [学会発表] 銀ナノ粒子担持セルロース/PVA複合材料の力学物性及び抗菌性能 (2019)
  • 著者名/発表者名: 小坂十理之、荒木 潤
  • 学会等名: 2019年繊維学会秋季研究発表会
• [学会発表] Cellulose Nanowhiskers - A Leading Nanomaterial Of The Oldest And The Newest Natural Polymer (2019)
  • 著者名/発表者名: Jun Araki
  • 学会等名: The 16th Pacific Polymer Conference (PPC16)
  • 国際学会
• [学会発表] セルロースナノウィスカーの表面電荷量が繊維の力学物性と 配向性に与える影響 (2018)
  • 著者名/発表者名: 小野祥生、荒木 潤
  • 学会等名: 平成30年度繊維学会年次大会
• [学会発表] 立体安定化されたセルロース/銀ナノ複合体の銀含量制御 (2018)
  • 著者名/発表者名: 牧野 登、荒木 潤
  • 学会等名: 平成30年度繊維学会年次大会
• [学会発表] ウレタンリンカー含有ポリロタキサン-アミノ酸誘導体を用いた pH 応答性環動ゲルの調製 (2018)
  • 著者名/発表者名: 野口敬仁、荒木 潤
  • 学会等名: 平成30年度繊維学会年次大会
• [学会発表] 化学架橋によるセルロースナノウィスカー繊維の力学物性向上 (2018)
  • 著者名/発表者名: 宮山昌大、荒木 潤
  • 学会等名: セルロース学会 第25回年次大会
• [学会発表] 分子量の異なるPEG側鎖を有する一環一置換スライディンググラフトコポリマーの熱挙動 (2018)
  • 著者名/発表者名: 森本早貴、荒木 潤
  • 学会等名: 第67回高分子討論会
• [学会発表] Mechanical properties of the fibers prepared by wet spinning of cellulose nanowhiskers (2018)
  • 著者名/発表者名: Masahiro Miyayama, Jun Araki
  • 学会等名: MoDeSt2018
  • 国際学会
• [学会発表] PREPARATION AND THERMAL BEHAVIORS OF ONE-BY-ONE-CAHIN-TETHERED SLIDING GRAFT COPOLYMERS WITH DIFFERENT LENGTHS OF PEG SIDE CHAINS (2018)
  • 著者名/発表者名: Saki Morimoto, Yasuhiro Kohsaka, Jun Araki
  • 学会等名: MoDeSt2018
  • 国際学会
• [学会発表] 化学架橋によるセルロースナノウィスカー繊維の力学物性向上の試み (2018)
  • 著者名/発表者名: 宮山昌大、荒木 潤
  • 学会等名: 平成30年度 繊維学会秋季研究発表会
• [学会発表] 一環一置換スライディンググラフトコポリマーの吸熱特性 (2018)
  • 著者名/発表者名: 森本早貴、高坂泰弘、荒木 潤
  • 学会等名: 平成30年度 繊維学会秋季研究発表会
• [学会発表] 良分散性ナノセルロース乾燥粉末の新規製造法の開発および充填補強材分野への応用 (2018)
  • 著者名/発表者名: 荒木 潤
  • 学会等名: ナノセルロースフォーラム技術セミナー
  • 国際学会
• [学会発表] 高結晶性セルロースナノクリスタルの製造・ 表面修飾および応用 (2018)
  • 著者名/発表者名: 荒木 潤
  • 学会等名: ファインケミカルジャパン2018
  • 国際学会
• [学会発表] セルロース／キチンナノウィスカーの表面荷電基量制御と物性の変化 (2018)
  • 著者名/発表者名: 荒木 潤
  • 学会等名: 第42回九州紙パルプ研究会講演会
  • 国際学会
• [学会発表] セルロースナノクリスタルの表面修飾とその応用 (2018)
  • 著者名/発表者名: 荒木 潤
  • 学会等名: 第85回紙パルプ研究発表会
  • 国際学会
• [学会発表] セルロースナノクリスタル (CNC) の特徴と応用 (2018)
  • 著者名/発表者名: 荒木 潤
  • 学会等名: 京都グリーンケミカル・ネットワーク オープンイノベーション
  • 国際学会
• [学会発表] ファイバー“ではない”ナノセルロース ~セルロース・キチンナノウィスカーの特性と利用~ (2018)
  • 著者名/発表者名: 荒木 潤
  • 学会等名: 第12回多糖の未来フォーラム
  • 国際学会
• [学会発表] クリックケミストリーによる一環一置換ポリロタキサン誘導体の調製 (2017)
  • 著者名/発表者名: 大坪千紘、森本早貴、高坂泰弘、荒木 潤
  • 学会等名: 第66回高分子学会年次大会
• [学会発表] TBDMS 基を用いた位置選択的カルボキシメチル化ポリロタキサンの合成の検討 (2017)
  • 著者名/発表者名: 山田香菜子、荒木 潤
  • 学会等名: 第66回高分子学会年次大会
• [学会発表] キチンナノウィスカーを添加したポリビニルアルコール膜の膜特性 (2017)
  • 著者名/発表者名: 湊屋貴浩、野崎功一、清野竜太郎、荒木 潤
  • 学会等名: 2017年度日本海水学会第68年会研究技術発表会
• [学会発表] セルロースナノウィスカー/銀ナノ粒子複合体の調製と立体安定化 (2017)
  • 著者名/発表者名: 飛田泰宏、浦田貴音、荒木 潤
  • 学会等名: 平成29年度繊維学会年次大会
• [学会発表] セルロースナノウィスカーの銀ナノ粒子担持と良分散性の両立 (2017)
  • 著者名/発表者名: 浦田貴音、荒木 潤
  • 学会等名: 平成29年度繊維学会年次大会
• [学会発表] Improved thermostability of polymer-coated cellulose nanocrystals (nanowhiskers) prepared by Polymerization with Particles (PwP). (2017)
  • 著者名/発表者名: Toshihiko Arita, Jun Araki
  • 学会等名: 7th International Colloids Conference
  • 国際学会
• [学会発表] セルロースナノウィスカーの直接紡糸 (2017)
  • 著者名/発表者名: 宮山昌大、荒木 潤
  • 学会等名: セルロース学会第24回年次大会
• [学会発表] チオール基を導入した立体安定化セルロースナノウィスカーへの銀ナノ粒子吸着 (2017)
  • 著者名/発表者名: 浦田貴音、荒木 潤
  • 学会等名: セルロース学会第24回年次大会
• [学会発表] 酸化グラフェン/セルロースナノウィスカー混合物の二軸液晶形成と繊維紡糸 (2017)
  • 著者名/発表者名: Rouhollah Jalili、帯金未来、佐藤高彰、荒木 潤、Gordon Wallace
  • 学会等名: セルロース学会第24回年次大会
• [学会発表] Cellulose Nanowhiskers/Graphene Oxide Hybrid Fibers Prepared by Wet Spinning of Biaxial Liquid Crystalline Dope. (2017)
  • 著者名/発表者名: Jalili Rouhollah, Miku Obikane, Takaaki Sato, Jun Araki, Gordon Wallace
  • 学会等名: The 4th International Cellulose Conference (ICC2017)
  • 国際学会
• [学会発表] Direct wet spinning of cellulose nanowhiskers. (2017)
  • 著者名/発表者名: Masahiro Miyayama and Jun Araki
  • 学会等名: The 4th International Cellulose Conference (ICC2017)
  • 国際学会
• [学会発表] Preparation of ‘powder’ cellulose nanocrystal for ller applications. (2017)
  • 著者名/発表者名: Toshihiko Arita and Jun Araki
  • 学会等名: The 4th International Cellulose Conference (ICC2017)
  • 国際学会
• [学会発表] 二軸液晶を形成する酸化グラフェン/セルロースナノウィスカー混合物の湿式紡糸 (2017)
  • 著者名/発表者名: Rouhollah Jalili、帯金未来、宮山昌大、佐藤高彰、荒木 潤、Gordon Wallace
  • 学会等名: 第66回高分子討論会
• [学会発表] 分子量の異なるPEGを側鎖に有する一環一置換スライディング・グラフトコポリマーの調製と熱挙動 (2017)
  • 著者名/発表者名: 森本早貴、高坂泰弘、荒木 潤
  • 学会等名: 第66回高分子討論会
• [学会発表] Surface Modification of Cellulose/Chitin Nanowhiskers and Corresponding Changes in Physical Properties. (2017)
  • 著者名/発表者名: Jun Araki
  • 学会等名: European-Japanese Workshop on Cellulose and Functional Polysaccharides 2017
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Polyrotaxane Derivatives: A Diversity of Property Changes. (2017)
  • 著者名/発表者名: Jun Araki
  • 学会等名: 9th Asian Cyclodextrin Conference (9ACC)
  • 国際学会 / 招待講演
• [図書] セルロースナノファイバー製造・利用の最新動向 (2019)
  • 著者名/発表者名: 荒木 潤ほか多数、宇山浩編
  • 総ページ数: 217
  • 出版者: シーエムシー出版
  • ISBN: 9784781314044
• [備考] 信州大学繊維学部 荒木研究室
  • URL: http://fiber.shinshu-u.ac.jp/arakilab/
• [備考] 信州大学繊維学部 荒木研究室
  • URL: http://fiber.shinshu-u.ac.jp/arakilab/homepage/Top.html