研究課題/領域番号 |
17K06991
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
核融合学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石澤 明宏 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (30390636)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2018年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2017年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | プラズマ閉じ込め / 非線形 / 乱流 / MHD / 燃焼プラズマ / 数値シミュレーション / ジャイロ運動論 / プラズマ・核融合 / 高エネルギー粒子 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
磁場閉じ込め型核融合装置において燃焼プラズマを維持するためには、燃焼によって生じた高エネルギー粒子とそれによって加熱される燃料プラズマそれぞれの良好な閉じ込めを両立させることが必要である。 本研究は、この燃焼プラズマの閉じ込め悪化を引きおこす主要な原因となる電磁流体不安定性(MHD)と乱流輸送を、世界最先端である大域的電磁的ジャイロ運動論シミュレーションを用いて評価することに成功した。高エネルギー粒子の閉じ込めは高エネルギー粒子駆動のマクロな電磁流体不安定性(トロイダルアルフェン固有モード、TAE)によって劣化され、一方、ミクロスケールを持つドリフト波乱流による輸送は燃料プラズマの閉じ込めを低下させる。本研究では、従来の研究と異なり、TAEと乱流のマルチスケール相互作用を初めて計算し、この相互作用の下で高エネルギー粒子および燃料プラズマの熱・粒子輸送を同時に評価した。その結果、TAEとドリフト波乱流の相互作用は、乱流揺動を波数空間と実空間の両方で同時に広げることを新たに示した。そしてその結果、揺動振幅は増大し、高エネルギー粒子の輸送及び燃料プラズマの輸送両方を増大させ、燃焼プラズマの閉じ込めを悪化させることを明らかにした。 本年度は、乱流のマルチスケール相互作用を定量的に評価するために、非線形エントロピー(自由エネルギー)移送を調べた。その結果、イオン温度勾配乱流は、実空間におけるE×B乱流対流によるグローバルなエントロピー移動に起因する新たなメカニズムによって飽和することを明らかにした。乱流に付随するエントロピーの径方向への移動は、磁場揺動の影響を避けるために乱流の最も活発な領域の両側でグローバルな帯状流を生成し、その結果グローバルな帯状流の励起が抑制されず、乱流の定常状態を導く。この成果をNulcear Fusion誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、本研究課題の成果をNulcear Fusion誌に発表するなど、成果発表を進めた。 トカマクなどの磁場閉じ込め核融合装置で高性能燃焼プラズマを実現するためには、乱流によって生じる燃料プラズマの熱及び粒子の輸送に加えて、核融合反応で生じる高エネルギー粒子駆動MHD不安定性による高エネルギー粒子輸送を低減する必要がある。これらの自由エネルギー源が異なりスケール分離がある揺動に起因するバルクプラズマ輸送と高エネルギー核融合アルファ粒子の輸送を同時に評価するために、トーラス全体を包括するグローバルなトロイダル非線形ジャイロ運動論シミュレーションを行った。その結果、乱流を駆動する低周波ミクロスケール電磁的ドリフト波揺動と、高エネルギー粒子輸送を引きおこす高周波マクロスケールトロイダルアルフベン固有モード(TAE)の新しい非線形結合機構を見いだした。その非線形結合の結果、揺動の振幅が増加し、バルクプラズマと高エネルギー粒子両方の輸送が増加して核融合性能が劣化するという新しい乱流状態が確立されることを明らかにした。 さらに、乱流のマルチスケール相互作用を定量的に評価するために、非線形エントロピー(自由エネルギー)移送を調べた。その結果、イオン温度勾配乱流の新たな飽和機構として、実空間におけるE×B乱流対流によるグローバルなエントロピー移動機構を明らかにした。エントロピーの径方向への移動は、磁場揺動の影響を避けるために乱流の最も活発な領域の両側でグローバルな帯状流を生成し、その結果グローバルな帯状流の励起が抑制されず、乱流の定常状態を導くことを明らかにした。 以上のことから、研究課題の達成度は順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、乱流を駆動する低周波ミクロスケール電磁的ドリフト波揺動と、高エネルギー粒子輸送を引きおこす高周波マクロスケールトロイダルアルフベン固有モード(TAE)の新しい非線形結合機構を見いだしたこと、そして、その結果、ポロイダル断面上で乱流が均一化されて揺らぎレベルが増加し、さらにバルクプラズマと高エネルギー粒子の輸送が増加して核融合性能が劣化するという結果をNulcear Fusion誌に発表した。 今後は、上記の乱流とMHDのマルチスケール相互作用の物理機構をより深く理解するために、乱流などを駆動する自由エネルギー(エントロピー)の非線形移送を調べる。波数空間と実空間両方で起きる非線形移送を定量的に評価することにより、揺動の振幅が増大する機構を理解できると期待する。この新しい解析方法により、乱流と巨視的MHDの非線形相互機構を理解する目的を達成する予定である。
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