研究課題
基盤研究(C)
我々は先行研究で、アクティヴタッチによる硬さ知覚が視覚の影響を受けて変化することを示した。そこで本研究では、機能的MRI実験によって触覚と視覚の統合による主観的な触知覚に関与する脳部位を調べた。硬、軟、中間の3種類のスポンジパッドを用意し、MRI装置中に仰臥する被験者の右手には常に中間パッドを、左手には3種類のうち一つをランダムに提示した。被験者は鏡に映った左手を観察しながら両手でパッドを触知し、右手で知覚されたパッドの硬さをマグニチュード推定法によって回答した。行動課題の結果では、被験者が硬いパッドを触知している鏡像を観察している時は右手のパッドが有意に硬く感じられ、軟らかいパッドを触知している鏡像を注視している時は右手のパッドも軟らかく知覚されていた。また、実験中に被験者は左手の鏡像を有意に右手のように感じていた。次に、被験者が右手のパッドを「硬い、および「軟らかいと感じている試行」と、「中間のパッドを触知している試行」とで異なる賦活パターンを示す脳部位をmultivoxel pattern analysisによって探索した。その結果、右の頭頂問溝と前頭前野(BA8)、および左のextrastriate body area(EBA)で有意に「硬い」と「軟らかい」の判別率が高かった。このうち、右の頭頂間溝は視覚と触覚による物体の形態認知に関与しているとされる部位に近く、本研究においてはこの部位の活動が主観的な硬さ知覚に関与していると推測された。また、EBAは身体所有感に関与することから、被験者が鏡像を右手のように感じていたことと関連があると思われる。一方で、uncertaintyに関与しているとされるBA8の活動から、触覚と視覚が統合されて主観的な触知覚が成り立つが、その過程で感覚間の不一致がもたらす一定の不確実さが付随することが示唆された。
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