研究課題
基盤研究(C)
ゲノム編集によるノックインは広汎な生命科学分野への応用が見込まれる有望な遺伝子工学技術であるが、正確性、特異性、安全性などに課題が残されている。本研究では、Cas9 nickaseを通常と違う使い方で用いるtandem paired nicking法(TPN法)によるノックインの研究を行った。さまざまな検討の結果、TPN法は従来法に匹敵するノックイン効率を維持しつつ編集局所のランダムな望まぬ挿入・欠失を飛躍的に減少させうることがわかった。また、同法によるノックインが「ゲノムの守護神」たるp53シグナル経路を攪乱せず、p53活性によるノックイン効率への干渉も受けないことが明らかになった。
本研究の結果、TPN法の利用によってノックインに伴う標的ゲノム部位の予期せぬランダム変異を抑えうることがわかった。また、TPN法では標的外部位(オフターゲット部位)のランダム変異が少ないことも示唆されており、ゲノム編集細胞のがん化などの危険性を抑制しうるものと期待される。さらに、DNA損傷反応を制御するp53シグナル経路がTPN法によって攪乱されないことは、同法の安全性を裏付けるものと考えられる。従来法に比肩するノックイン効率が保持されていることも鑑み、TPN法は今後の技術的な洗練を経たのち、将来的には臨床医学、畜産学、植物科学などに応用可能な有用なノックイン法になりうるものと期待される。
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