研究課題
基盤研究(C)
旧北区-東洋区間を隔てる動物地理区境界線の一つ「三宅線」を分布境界とした鱗翅類について複数領域の遺伝子マーカーによる分子系統解析と形態学的解析を行い、三宅線を挟んで南北に異なる昆虫相の遺伝的構造と形成過程を調査した。三宅線より北側の九州本土以北を構成する鱗翅類は50万年前、40万年前、17万年前、10万年前、8-9万年前以降と各種で異なる時期に恐らく朝鮮半島経由で大陸から進入して現在の分布を形成したことが判明した。一方、三宅線の南側の構成要素となる多くの鱗翅類は温暖化や人為的影響等による最近の北上で形成された可能性が高いことが示唆された。いくつかの種では今回の解析を基に分類学的再検討も行った。
旧北区―東洋区間を隔てる動物地理区境界線の一つ「三宅線」を分布境界とするチョウ・ガ類について、形態による分類学的再検討と分子系統地理学的解析によってその遺伝的構造と形成過程を明らかにするとともに、各種で少しずつ異なる分化と多様化の成立要因を解明した。この成果は最近ではあまり注目されない三宅線の動物地理区境界線としての重要性を再認識させるとともに、多様性生物学の主軸である系統分類学や生物地理学、保全生物学への貢献だけでなく、分岐年代を伴う生物地理学的情報に地史や気候変動の情報を重ねて議論したことで、古地理学や古気象学にも寄与することが期待される。
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