研究課題
基盤研究(C)
植物の微量必須元素であるホウ素が欠乏すると、細胞に活性酸素分子種(ROS)が蓄積し、酸化障害や細胞死が発生する。ホウ素は細胞壁構造を安定化する因子なので、欠乏すると細胞壁が不安定化すると推定されるが、それがROS蓄積や細胞死をもたらす機構は不明である。そこで本研究では、モデル植物シロイヌナズナの根をホウ素欠除処理した際の応答を詳細に解析した。その結果、短時間のホウ素欠除処理で実際に細胞壁の強度低下が起こること、またROS蓄積には細胞壁ペルオキシダーゼが関与している可能性があること等、ホウ素欠乏による障害発生の機構解明につながる知見が得られた。
土壌に十分量のホウ素が含まれず、ホウ素欠乏が作物生産の制限要因となっている地域は世界各地に存在する。作物のホウ素欠乏は可食部の壊死や不稔を引き起こし収量・品質を著しく低下させる。このような欠乏障害の回避や欠乏耐性品種の作出には、そもそもホウ素欠乏がなぜ・どのように植物細胞に障害をもたらすか理解することが重要である。本研究で明らかとなった、ホウ素欠乏時に実際に細胞壁の強度低下が生じていること、障害の原因物質である活性酸素分子種がペルオキシダーゼにより生成している可能性があることは、この過程の解明に資する重要な情報である。
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