研究課題
基盤研究(C)
体液量の調節は生命の維持に必須であり、体への流入水分量と体外への排出水分量は、神経やホルモンの働きにより調節されている。本研究では、神経伝達物質の一つであるアセチルコリン(ACh)が作用するM2ムスカリン受容体に着目し、同受容体が体液調節に重要な役割を果すホルモンであるバゾプレシン(AVP)の合成や分泌調節にどのような役割を果たしているか明らかにしようとした。その結果、M2ムスカリン受容体の刺激は視床下部視索上核におけるAVPの合成および分泌を促進するように調節しており、同受容体の新たな役割を明らかにした。
AVPは体液量の恒常性を調節する主要なホルモンの一つであり、その分泌不全は尿崩症や夜間頻尿の原因となっている。また、ホルモンとして腎臓に作用するだけでなく、分泌されたAVPが近くの神経細胞に作用して、神経細胞の破壊を防ぐ働きをすることも明らかになっている。さらに、AVPは社会認知能力の獲得やストレスに対する反応性にも関与しており、うつ病などの精神疾患の発症に関わっていると考えられている。したがって、AVPの分泌調節機構について検討した本研究成果は、上述した疾患における新たな治療薬の開発につながる基礎情報を提供できると考えられる。
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