研究課題
基盤研究(C)
食道扁平上皮癌(ESCC)細胞との共培養によりがん関連線維芽細胞(CAF)様細胞に誘導される線維芽細胞活性化タンパク(FAP)がAktおよびErkシグナルを活性化することでCCL2やIL-6の分泌が促進され、癌細胞の運動・浸潤能やマクロファージ(Mφ)のTAM様分化と運動能亢進を誘導し、腫瘍微小環境形成に寄与していることを明らかにした。CAF様分化過程で誘導される分子PAI-1はその受容体LRP1を介してAktおよびErkシグナル経路を活性化することでESCC細胞株およびMφの運動能および浸潤能を促進した。癌間質のPAI-1および癌胞巣のLRP1を高発現するESCC症例は不良な予後を示した。
食道扁平上皮癌における癌細胞・間質相互作用はいまだ解明されていない点が多く、さらに、これまでTAMとCAFはそれぞれ独立して解析されてきた。本研究の成果の学術的・社会的意義は、特異な機能的分化を果たしたTAMやCAFと癌細胞の間に構成されるサイトカイン・ケモカインを基軸とした相互作用に注目し、食道扁平上皮癌の分子病理学的解析を行ったことである。得られた研究成果は近年開発の進むサイトカイン・ケモカイン阻害剤を用いた細胞間相互作用への介入に基づく食道扁平上皮癌のコントロール法への足がかりを提供するものと期待される。
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