研究課題
基盤研究(C)
本研究おいては、①IMP-6とIMP-1の基質特異性の違いに対する構造学的考察、②Y180N変異型酵素の構造解析、を行った。①については、0.183 nm分解能のIMP-6の構造を決定した。全体構造はほぼ同であったが、基質結合に関与するL3と呼ばれるループ部分の構造が大きく異なっており、イミペネムの結合に対して立体障害が起こることが示された。②については、メロペネムを用いた指向性進化法により、IMP-6よりさらにメロペネムに対する活性の高い変異型酵素を取得した。また、予備的な構造解析の結果、基質特異性の変化は、N末とC末の2つのドメインを結ぶループの自由度が増加したことが原因と予想された。
本研究の学術的意義は、IMP-6のX線結晶構造解析とシミュレーションの結果とから、IMP-6がイミペネムに対して活性が低い原因が推定されたことと、指向性進化法の手法を用いてメロペネムの選択圧下でIMP-6を進化させると、メロペネムに対する活性がさらに増加することを示したことである。これらの結果から、メロペネムの過度の使用により、さらに強いカルバペネム耐性菌が出現する可能性を示した。また、イミペネムの側鎖に対し、どのような化学的修飾を加えれば、より効果的な抗菌薬の開発が可能かという方向性を与えた。この2点が、本研究の社会的意義であると考える。
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