研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、大腸癌の微小環境における腫瘍関連マクロファージ(TAM)の発現プロファイル解析により、TAMの腫瘍の増殖、浸潤への関与を解明することであった。しかし、大腸癌組織からTAMを分離する過程に困難が生じた。そのため、従来切除、保存されていた大腸癌、大腸前癌病変の標本を用いて、免疫組織化学による蛋白発現の解析を行った。TAMの腫瘍への浸潤様式と臨床病理学的特徴との関連について予備的検討を行ったが、相関は得られなかった。副次的に、まれな前癌病変の一つである大腸鋸歯状腺腫において、高頻度にβカテニンの核内集積が確認され、鋸歯状腺腫の形成におけるWntシグナル経路の重要性が示唆された。
当初の目的である、腫瘍関連マクロファージの大腸癌の増殖、浸潤に果たす役割の解明を果たすことはできなかった。しかし、副次的に、大腸鋸歯状腺腫において高頻度にβカテニンの核内集積が確認され、Wntシグナル経路の亢進が発癌に寄与している可能性が示された。本研究の結果から、従来提唱されてきた管状腺腫、無茎性鋸歯状腺腫を前癌病変とする発癌経路とは異なる第3の大腸発癌経路の存在が示された。本研究の結果は、大腸鋸歯状腺腫を前癌病変とする大腸癌に対する、Wntシグナル経路を標的とした新たな分子標的治療の開発に資することができると考えられる。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
PLoS One
巻: 15 号: 2 ページ: e0229262-e0229262
10.1371/journal.pone.0229262