研究課題
基盤研究(C)
肺炎を起こす菌で最も頻度の高い肺炎球菌を用いたマウス肺炎モデルの実験系で、肺の所属リンパ節である縦隔リンパ節で起こる免疫機構について解明した。肺炎球菌肺炎の際に、縦隔リンパ節に好中球が集積し、それが菌血症を防止する役割を果たしていることがわかった。そのメカニズムとして、肺リンパ内皮細胞由来のケモカイン(CXCL1, CXCL5, G-CSF)によって縦隔リンパ節に好中球が集まる経路を証明した。さらに縦隔リンパ節に集簇した好中球は、血液内及び肺内好中球と異なり、MHCクラスIIを発現してリンパ節内で獲得免疫を刺激している可能性が示唆された。
肺炎は日本でも死亡者が増加している重要な疾患である。細菌によって引き起こされる肺炎の中で最も頻度が高い肺炎球菌肺炎に対しては、2014年に高齢者に対してワクチン定期接種が導入されたが、いまだ成人の侵襲性肺炎球菌感染症は減少しておらず、予後不良で後遺症もしばしば残る。本研究では、肺炎の動物モデルを用いて、肺の所属リンパ節である縦隔リンパ節で起こる免疫機構について解明したことで、侵襲性肺炎球菌感染症の防御メカニズムの一つが明らかになった。この成果を踏まえて、肺炎の重症化予防に繋がる新たな補助療法の展開に臨みたい。
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