研究課題
基盤研究(C)
本研究では、疾患に関わらず老化によって脳内で蓄積する欠失変異型ミトコンドリアDNA(mtDNA)に注目し、ミトコンドリア機能障害がパーキンソン病の発症・進行に与える影響を明らかにすることを目的とした。本年度は、欠失変異型mtDNAを脳と筋で過剰に蓄積する変異Polgヘテロマウスと、家族性パーキンソン病原因遺伝子でありautophagyによる不良ミトコンドリアの選択的分解(mitophagy)を担うPINK1遺伝子変異マウスを掛け合わせた二重変異マウスを作製し、不良ミトコンドリア産生の促進と、その除去が障害されることが予想されるマウスを作製した。この二重変異マウスについてHang Wireテストを用いてパーキンソン病様の表現型について検討したところ、老齢マウスにおいて運動機能低下を示唆する傾向が見られたが統計学的に有意な差は見られず、より週齢の進んだマウスで、十分な個体数を用いた検証が必要と考えられた。また、マウス神経芽細胞株Neuro2aにおいても欠失変異型mtDNAの蓄積を誘導するために、CRISPR/Cas9システムを用いて、パーキンソニズム併発ミトコンドリア病である常染色体優性遺伝CPEOの病的変異を導入した変異PolgヘテロNeuro2aを作製した。一方で、野生型Neuro2a細胞において、ミトコンドリアイオノフォアであるFCCP処理によるミトコンドリア膜電位消失に起因するmitophagyを誘導し、化学架橋剤DSP処理にて固定した細胞から、遠心分離法によって得た粗ミトコンドリア画分に対し、抗Parkin抗体を用いた免疫沈降法によって、Parkin局在(mitophagy対象)ミトコンドリアを濃縮する手法を確立した。これらの濃縮画分からmtDNAを検出することに成功しており、今後は本手法によって変異PolgヘテロNeuro2aや変異Polgヘテロマウスを用いることで、mitophagyの対象となる不良ミトコンドリアやそれらが持つmtDNAの特徴を同定することが可能であると考えられる。
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Psychiatry and Clinical Neurosciences
巻: - 号: 8 ページ: 518-529
10.1111/pcn.12496