研究課題
基盤研究(C)
最近RNAのN6-アデノシンのメチル化(m6A)が、Wilms' tumor 1-associating protein(WTAP)という核蛋白と、メチル基転移酵素Methyltransferase like(METTL)3およびMETTL14との複合体(WMM複合体)によってなされることが明らかにされたが、その生理的意義は殆ど不明である。我々はこれまでに、WTAPを減少させると、肪細胞分化と肥満が抑制されることを明らかにしていた。そこで本研究は、m6A-RNAメチル化を介して、WMM複合体が脂肪細胞分化を制御するメカニズムを明らかにすることを目的とした。H30年度我々は、脂肪細胞の分化過程でこれらWMM蛋白が増加することから、そのメカニズムを検討した。その結果、免疫蛍光染色(IF)によるこれら3因子の核内増加と比較して、mRNAの変化および蛋白量の変化は比較的軽度であった。IFの詳細な検討からこれら3因子は、分化前には殆ど核内speckleに局在するのに対し、分化誘導刺激後には核質(nucleoplasm)にも広く分布することが分かった。即ちIFで認められた脂肪細胞への分化誘導刺激によるWMM蛋白の核内の増加は、mRNA・蛋白レベルでの絶対量の増加だけでなく、核内speckleから核質への分布の広がりを反映するものと考えられた。興味深いことにこの分化誘導刺激による核内speckleから核質への分布増加は、その他の核内speckle蛋白であるSC-35やSmith抗原でも共通して認められ、従来より核内speckle蛋白がRNAの転写後修飾に関わることが示唆されていることから、WMM蛋白の分化誘導刺激後の核質における活発な転写後修飾の機能を示唆するものと考えられた。以上を含めたこれまでの研究成果を、Molecular and Cellular Biologyに発表した。
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Mol. Cell Biol.
巻: 38 号: 16 ページ: 81-91
10.1128/mcb.00116-18