研究課題
若手研究(B)
海洋の高次捕食者である鯨類の栄養状態はその海域の生産性に大きく影響を受け、その動態は優れた環境応答の指標となる。しかし、広大な海洋で自由に動く鯨類の栄養状態を、殺さずに調べることは難しい。また、水面と中深層を高頻度で往復する大型ハクジラ類は効率的な海洋観測のプラットフォームとなり得る。本研究では、鯨類の行動や栄養状態の変化を指標とし、海洋生態系をトップダウン的に観測する手法を確立することを試みた。具体的には、動物に記録計を装着するバイオロギング手法を用い、次の三つの課題に取り組んだ。1) 非侵襲的な鯨類の肥満度推定手法の開発、2) マッコウクジラの長期追跡、3)ハクジラ類の捕食行動の観測。
広大な海洋で、動物が変化する環境にどのように応答するのか把握することは難しい。動物に記録計を装着しその行動を記録するバイオロギングは、動物の環境応答を直接計測できる。また、一部の鯨類ではかつての商業捕鯨により個体数が激減し、さらに近年では海中騒音や漁業による混獲など、人間活動の影響を大きく受ける。海洋生態系のピラミッドを上位から支える役割を持つ高次捕食者が危機的な状況に追い込まれると、その影響が生態系下位の動植物の増減に影響を及ぼし、海洋生態系全体のバランスが崩れ壊滅的な影響を被る恐れがある。海洋の高次捕食者である鯨類の栄養状態や動態を知ることにより、海洋の健全性を評価できると考えられる。
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