研究課題
若手研究(B)
本研究は,全身のリンパ節がヒトのリンパ節と同等のリンパ節サイズ (長径 10mm) にまで腫脹するリンパ節腫脹マウス MXH10/Mo-lpr/lpr を用いて転移リンパ節モデルの作製とその治療手法の確立をおこなった.上流リンパ節である腸骨下リンパ節へドキソルビシンと微小気泡の混合液を注射すると側腹部リンパ管を介して下流の転移腋窩リンパ節へ送達されることが高周波超音波診断で確認された.ここで外部から超音波を照射すると微小気泡の破壊によりドキソルビシンが転移リンパ節内の辺縁洞腫瘍に効果的に導入されていることが明らかになり,高い抗腫瘍効果が得られることを示した.
がん死の原因はその 9 割以上が転移によるものである.リンパ管とその経路上に位置するリンパ節はがんの主な転移経路であり,効果的なリンパ節転移治療ががん治療成績の向上に直結する.従来の転移リンパ節治療法は,侵襲性,組織特異性,安全性,費用対効果の面で課題があった.本研究で提唱したリンパ管を介した薬剤投与と超音波による分子導入法は比較的安全で簡便な実験系で遂行可能であることから,従来のリンパ節転移治療法での課題を克服しうる可能性がある.さらに,本研究手法はリンパ球への遺伝子導入へとつながる可能性を示唆するものであり,免疫細胞への安全で効率的な遺伝子導入は新たながん免疫療法への展開が期待される.
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Clin Cancer Res.
巻: - 号: 11 ページ: 2653-2664
10.1158/1078-0432.ccr-17-2852