研究課題/領域番号 |
17K13579
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
人文地理学
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊賀 聖屋 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70547075)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2018年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2017年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | オルタナティヴフードシステム / ネットワーク / エビ養殖 / インドネシア / 東ジャワ州 / オルタナティヴ / 食料供給体系 / アクター / インドネシア東ジャワ州 / シドアルジョ県 / エビ / 養殖 / 生産の空間 / 世界の異質化 / 食の地理 / 異種混淆 / 行為主体性 / 食料生産システム / 自然 / 技術 |
研究実績の概要 |
本年度は,新型コロナウイルスの流行によりインドネシアにおける調査の実施が困難となったため,2019年度までに調査を実施した①「東ジャワ州の環境保全型エビ養殖業」と②「日本国内の閉鎖循環式エビ養殖」とを比較検討する作業を中心に行った.その概要は以下の通りである. 【自然環境との関わり方】環境保全型養殖の場合,池を取り巻く自然環境に開放的であるがゆえに,関係を構成する要素が環境の状況に応じて偶発的に入れ替わるような流動性の高さがみられる。そのようなネットワークの特質が,生産管理の様々な局面への自然物の動員を促している。対してRASは,エビ生産の場を屋内に囲い込むとともに,そこに高度な技術により生み出された機器を配置することで周囲の自然環境が生産に及ぼす影響を最小化している。RASの場合,様々な人工物の動員を通じて生産の場が自然環境から切り離されており,環境保全型に比してネットワークが安定している点で特徴的といえる。 【生産管理に用いられる知識・技術の質】環境保全型養殖では,生産者が水を舐めて塩分を確認したり,目視で水質を判断したりすることがよくある。生産者に体化された暗黙的な知識やローカルな文脈に埋め込まれた技術が不可欠な存在として位置づけられている。そして,それらの知識・技術の保持者がネットワークへと積極的に動員される点に特色がある。RASの場合は,水槽の様々な箇所に複雑な機器が配置されており,稚エビの育成過程がそれらにより自動的に制御されている。機器の操作や生産管理の方法はマニュアル化され,非熟練労働者でも稚エビの育成を行うことができる。このような生産のあり方を可能にしているのは,高度な知識を有する専門家の存在である。つまり,RASのネットワークでは,通常は施設から離れた場所に位置する専門家が生み出す科学的知識や機器によって,稚エビや水などの要素間の関係が調整されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度から2022年度にかけて実施予定であったインドネシア・西ジャワ州における環境保全型エビ生産システムに関する調査が新型コロナウイルスの感染拡大のため延期となってしまったためである.そのため研究期間の延長を申請し,フィールドワーク等にかかる費用を繰り越した.現在は,次年度以降の調査の再開を念頭に,インドネシア側のカウンターパートであるシアクアラ大学アグス・ヌグロホ講師と綿密に連絡を取りつつ,今後の計画(西ジャワ州,東ジャワ州,アチェ州におけるフィールドワーク)を検討している. なお,2019年度までにある程度のフィールド調査を実施していたため,本年度はその成果をまとめる作業を中心に行なった.具体的には,雑誌アグリバイオにRAS(閉鎖循環型エビ養殖)と環境保全型養殖をめぐるアクターのネットワークに関する論稿を投稿した.また,RASの生成について,アクターネットワークセオリーの存在論に依拠しつつ分析した論稿の投稿準備を行った.次年度中には同論文を地理学評論へと投稿する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度まで実施していたインドネシアにおけるフィールド調査を継続的に実施する予定である.具体的には,西ジャワ州の環境保全型養殖に関する調査を中心に研究を進める予定である.また,コロナ前の2019年まで実施していた東ジャワ州シドアルジョ県の環境保全型養殖とアチェ州バンダアチェ市およびアチェブサール県の集約型養殖に関する調査も再開することにしたい. ただし,コロナウイルスの流行状況が今後も十分に読めないことと,インドネシア国内におけるフィールドワークの実施が現実的に可能かどうか不明瞭である.最終年度は,日本国内のエビ生産システムに関するフィールドワークを中心に研究を進めていくことも検討している.その際,上述のアグス・ヌグロホ講師と沖縄県のエビ養殖に関する調査を実施する予定である.具体的には,沖縄本島および久米島のエビ養殖と稚エビ生産に関するインタビューを養殖業者や種苗供給センター等に実施する. なお,本研究の枠組みとも関わる科学技術社会論やアクターネットワーク論に関連する文献のレビューは継続的に取り組む.
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