研究課題/領域番号 |
17K14144
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
計算科学
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 良郎 東京工業大学, 工学院, 助教 (40631221)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2018年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2018年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2017年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ディープラーニング / 数値解析 / 機械学習 / マルチスケール / 数値シミュレーション / マルチスケール解析 / 熱伝導問題解析 / 不均質材料 / 深層学習 / 人工知能 / シミュレーション工学 |
研究実績の概要 |
本研究目的は,人工ニューラルネットワーク(ANN)とマルチスケール解析手法を融合した全く新しい数値シミュレーション法を開発することである.本手法が確立されれば,従来手法と同様の高精度解をより低コストに算出することが期待できる上,適用に制約がなく原理上あらゆる物理現象の解析が可能となる. 平成29年度は,提案法に用いるANNとして,画像認識能力に優れている畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を導入し,提案法を2次元の線形定常熱伝導問題に適用した.平成29年度に実施した数値実験により,CNNを導入した提案法は,ANNを使用しない従来のSDMとほぼ同等の解を算出し,さらに解析時間を短縮できることが分かった. 平成30年度は,SDMに加えて,マルチスケール解析手法の1種である領域分割法(DDM)とCNNを融合したマルチスケール解析手法を提案し,平成29年度と同様に2次元の線形定常熱伝導問題に適用した.また,CNNの学習に「知識の蒸留」と呼ばれる手法を導入し,提案法の更なる解析精度向上および解析時間の短縮を図った.平成30年度に実施した数値実験により,新たに提案した手法は,CNNを使用しない従来のDDMとほぼ同等の解を算出し,更に解析時間を短縮できることが分かった.さらに,解析精度については,平成29年度に提案した手法を大きく上回った. 以上の成果により,提案手法がSDMだけではなくDDMにも適用可能であることを実証した.さらに,今年度提案した手法は,昨年度提案した手法を大きく上回る解析精度を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は,平成29年度に引き続き,2つ目の研究目的である「解析データに基づく提案法の精度・コスト検証」を行った.具体的には,SDMに加えて,マルチスケール解析手法の1種である領域分割法(DDM)とCNNを融合したマルチスケール解析手法を提案し,平成29年度と同様に2次元の線形定常熱伝導問題に適用した.また,CNNの学習に「知識の蒸留」と呼ばれる手法を導入し,提案法の更なる解析精度向上および解析時間の短縮を図った.その結果,新たに提案した手法は,CNNを使用しない従来のDDMとほぼ同等の解を算出し,更に解析時間を短縮できることが分かった.さらに,解析精度については,平成29年度に提案した手法を大きく上回った. 昨年度示した研究の推進方策のうち,(1)非線形連成問題を対象とした提案法による解析の実施および性能評価,(2)時刻歴問題を対象とした提案法による解析の実施および性能評価は実施できなかった.これは,DDMとCNN融合した新解析手法の原理構築および解析コード作成,提案法が短時間で高精度解を算出できるようなCNNの改善に時間を要したためである.しかし,非線形連成問題の一種である「熱伝導率が温度に依存して変化する物体の定常熱伝導問題」の提案法による解析の方法は既に考案済みであり,非線形連成問題を対象とした提案法による解析については早急に検証可能であると考えている. また,CNNを用いた提案法は,解析可能形状が矩形のものに限られており,複雑な形状を解析できないという問題点がある.この問題を解決することができれば,提案法の適用範囲を広げることができると考えている. 以上により,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は,以下の2つを実施する. (1) 非線形連成問題を対象とした提案法による解析の実施および性能評価:非線形連成問題の例として「熱伝導率が温度に依存して変化する物体の定常熱伝導問題」を対象とした提案法による解析を行う.「現在までの進捗状況」で述べたように,本問題の解析方法は既に考案済みである. (2) 矩形以外の形状を解析できるようにするための提案手法の改善:現在は提案手法に用いるANNとして,画像認識に用いられているCNNを導入している.そのため,解析可能形状が矩形に限られているという問題がある.この問題を解決するために,提案手法に用いるANNとしてグラフ畳み込みネットワーク(GCN)を導入することを検討している.有限要素法(FEM)では,解析対象物の形状をメッシュ構造により表現する.メッシュ構造とは,要素と呼ばれる単純な図形の分割で表現された構造である.数学的には,節点をエッジで繋いだものの集合として捉えられるため,グラフ構造とも呼ばれる.GCNはグラフ構造の入力に対応したANNであり,最近では化学物質の物性推定などに適用されている.様々な形状の解析対象物をグラフ構造で表現し,GCNを用いてグラフ構造から解析結果を近似することができれば,提案法を様々な形状に適用できるようになる.そのため,これについては優先して取り組みたいと考えている. 平成30年度以降の研究目的であった「実験データを学習したANNを離散化式とする解析の実施および性能評価」については延期し,上記の研究を行いたいと考えている.
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