研究課題
若手研究(B)
今年度は、昨年度に引き続き、Fe用に開発した高圧セルを用いて、データ間隔が空いている条件や測定精度に問題があった条件においてFeおよびFe80S20メルトの音速測定実験を行った。さらに、新たに試料のX線画像の差分から融解判定を行う手法を確立し、これまでは全溶融とみなしていた極僅かに固相が残った状態の測定データを部分溶融として省けるようにした。その結果、Fe-FeSメルトの音速の組成、圧力依存性を精度よく議論することが可能になった。Feメルトの音速の圧力依存性は小さいが、Fe57S43メルトの音速の圧力依存性は大きく、Fe57S43メルトの音速は急激に増加するため、20GPa付近で速度差は小さくなる。Fe80S20メルトの音速は、10GPa付近までは、Fe57S43メルトと似た増加傾向を示すが、10GPa付近で勾配が変化し、それより高い圧力ではFeメルトと似た増加傾向を示す。固相での圧縮曲線を比較すると、スピン転移を伴うFeS V相の体積変化は、FeやFe3Sの体積変化に比べ非常に大きい。また、常圧のFe-Ni-Sの音速測定によると、水のように温度の上昇に伴い速度が増加する異常な傾向が報告されている。このような異常な振舞いは、2つの構造が共存することを示唆する。実際、常圧のFe-FeS系は、過冷却領域に2液相分離領域をもつ相分離傾向の液体であり、Se-Te系のように中間組成領域でFe様構造とFeS様構造の共存していることは十分に考えられる。熱力学的には、この不均質な構造が10GPa付近で解消されると考えられており、この2つの効果を組み合わせることで、Fe80S20メルトの音速の圧力変化をうまく説明することができる。上記を考慮し、火星核条件(約20-40GPa)でのFe-FeSメルトの音速を見積もったところ、火星核条件では硫黄量で音速がほとんど変わらないことが明らかになった。
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Comptes Rendus Geoscience
巻: 351 号: 2-3 ページ: 163-170
10.1016/j.crte.2018.04.005
Photon Factory Highlights 2016
巻: 2016 Highlights(依頼原稿) ページ: 40-41