研究課題
若手研究(B)
平成31年度(令和元年度)は,予定通り観測データの取得・品質管理を継続し,事例解析・統計解析等の研究を行った.南岸低気圧による首都圏での降雪時の降雪結晶特性とその環境場を調査した.2016年からの3冬季9事例における降雪結晶観測から,砲弾状や交差角板状を伴う低気圧Aと,ほとんどが樹枝状や雲粒付である低気圧Bの2種類に分類できた.低気圧Aは前線を伴う温帯低気圧であり,低気圧Bはほとんどが前線を伴わない低気圧だった.また,低気圧Aでは低気圧Bに比べて降雪雲の背が有意に高く,下層から上層にかけて高温・湿潤な環境だった.これは前線を伴う温帯低気圧のWarm Conveyer Beltの構造を反映しているものと考えられ,このような環境場の違いが降雪結晶特性の違いを生んだと考えられる.砲弾状や交差角板状は表層雪崩の要因となるため,低気圧の構造などから表層雪崩発生危険度を診断できる可能性があることがわかった.また,2019年1月26日に関東平野で発生した対流雲の発生環境場と雲物理特性を調べた.地上マイクロ波放射計データを用いた1DVARにより,対流雲の発達環境場として可降水量が減る中で下層昇温と上空寒気流入により大気の状態が不安定化していた.また,つくばで観測された2つの対流雲で降雪粒子の落下速度に明瞭な違いが見られ,雲粒付着の程度も異なっていた.これは対流雲のライフステージの違いによると考えられる.また,通常地上で降雪が起こらないような気温でも霰・濃密雲粒付結晶による降雪が起こっていたことがわかった.これらの研究成果や本課題での取り組みについて,一般向けの講演会や取材,著書の執筆・刊行などを通して,アウトリーチ活動を行った.
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた観測データ取得・品質管理の継続や,各種観測データ等を用いた解析について滞りなく実施することができた.また,事例解析を通して従来地上の雨雪判別に用いられてきた気温・相対湿度の関係が概ね適切であることを確認できたが,対流性の雪雲による霰・濃密雲粒付結晶による降雪の場合には従来の経験則が当てはまらないということが明らかになった.これらのことから,平成31年度(令和元年度)の研究計画は当初の計画通り順調に進展している.
引き続き観測データ取得・品質管理を行うとともに,各種観測データや数値シミュレーションの結果を用いて,首都圏降雪事例における降水種別と大気下層の気象場についての事例解析を行う.これらの結果をもとに降水種別の決定に特に重要な役割を果たしている気象要素を抽出し,より高精度に雨雪判別を行うために着目すべき気象要素を整理の上,新たな高精度雨雪判別手法を提案する.
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