研究課題
若手研究(B)
本研究では、5重量%以上の高水素密度を有し、室温付近にて可逆的な水素吸蔵・放出が可能な革新的水素貯蔵材料の創製を目指し、熱力学的安定性と水素の結合状態との相関に着目した基礎研究を推進した。具体的には、リチウムやマグネシウムなどの軽金属を陽イオンとし、ホウ素系錯イオンBH4と、遷移金属元素からなるFeH6、NiH4など、水素の結合状態が異なる複数の錯イオンが共存した新規錯体水素化物群を合成し、圧力-組成等温線測定などの手法を用いて合成試料の水素吸蔵・放出特性を評価、水素放出温度や吸蔵性能における水素の結合状態の影響を調査した。代表的な成果としては、高い水素貯蔵密度を有する一方で、水素放出温度の低下ならびに繰り返し水素吸蔵・放出特性の改善が課題であったホウ素系錯体水素化物LiBH4に、遷移金属系錯体水素化物Mg2FeH6を添加した複合材料において、錯体水素化物同士の複合化反応(LiBH4 + Mg2FeH6 → LiH + 2Mg + (FeB, Fe) + H2)によってLiBH4単体の分解反応における高い熱力学的安定性が改善され、150℃も低い温度領域にて水素放出が可能であることを実証した。また、600 ℃、35 MPaの高温高圧下においても部分的にしか水素吸蔵反応が進行しないと報告されているLiBH4に対し、本研究にて合成した複合材料では、400 ℃、20 MPaにおいて顕著な水素貯蔵量の減少を伴わずに4回以上の繰り返し水素吸蔵・放出が可能であることも見出した。本研究の結果より、水素の結合状態が異なる錯イオンの複合化が新たな高密度水素貯蔵材料の合成手法として有望であることが示され、今後は効果的な錯イオン種の組み合わせの選定や、複合化比の最適化により、優れた繰り返し水素吸蔵・放出特性を有する高密度水素貯蔵材料の創製が進むものと大いに期待される。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
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