研究課題
若手研究(B)
ナメクジに塩をかければ縮むように,細胞も細胞外溶液が細胞内溶液よりも高濃度の状態(=高浸透圧ストレス)に晒されれば縮む.このままでは死ぬので,細胞は体積を回復して生き延びる.この際,細胞はそもそも高浸透圧ストレス状態を認識する必要があり,HICCというイオンを通すタンパク質をセンサーとして使うと考えられている.しかしHICCの具体的な実体は不明であった.そこで本研究では,ヒトの遺伝子情報を基に約2万ものタンパク質を1つずつ調べてHICCを構成するタンパク質の発見を試みた.結果,本期間中にHICCの実体だと証明するには至らなかったが,候補タンパク質や今後の足掛かりとなる知見を得ることに成功した.
液体と接している細胞は常に浸透圧ストレスに晒されるリスクがあり,浸透圧ストレスに適切に応答する仕組みは細胞が生存する上で必須の基本的なシステムの1つである.さらに細胞はこのシステムを浸透圧ストレスに対抗する時だけでなく,分裂や移動する時など体積を変化させる細胞機能時にも利用すると言われている.つまり,このシステムの異常が高血圧やがん,炎症などの疾患に関わっている可能性がある.本研究はシステムを始動させるセンサー部分に着目したものであり,本成果を足掛かりにシステムの全貌解明に向けてさらに研究を発展させることで,様々な疾患に対する創薬基盤・治療戦略の開発に資することが期待される.
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