研究課題
若手研究(B)
次世代に目的の遺伝子を残す技術は有用であり、医療、家畜生産や、希少動物や絶滅危惧種の増殖維持の側面からも重要である。目的の子孫を増産させる方法の一つとして、キメラ技術がある。キメラ技術は複数の手法が確立されており、受精卵キメラや四倍体胚を用いた、胚盤胞補完法が代表的であり、目的の細胞の遺伝情報を受け継ぐことが可能であるが、生殖細胞まで寄与する割合はあまり高くないことや、産仔率が低いといった問題がある。そこで、本研究では直接受精卵で生殖細胞欠損胚を作出することで、通常胚キメラと比較し、目的細胞の生殖細胞への寄与率改善を目指す。平成29年度は、生殖細胞を欠損させるために始原生殖細胞形成初期から発現するPrdm14をターゲットとして決定した。guide RNAを複数設計し受精卵前核へ注 入後、移植し産仔を解析すると、ホモで欠損している個体を確認でき、精巣を16週齢で摘出すると、同齢の野生型と比較し明らかにサイズが小さくなり、また精 巣内および精巣上体尾部中に精子は無く、生殖細胞が完全に欠損していることが確認できた。また、Prdm14遺伝子のヘテロ欠損個体において、野生型と比較して 顕著に精巣のサイズが小さくなっており、ヘテロ欠損であっても、キメラにおける目的細胞の寄与効率が上昇することが期待される結果であった。平成30年度は、29年度に生殖細胞を欠損させるためにターゲットとして決定した、始原生殖細胞形成初期から発現するPrdm14について4種のguide RNAを設計し、ノックアウト効率を調査した。その結果4種同時に注入することで、ホモおよびヘテロノックアウト個体を約30-60%の効率で作製可能であった。さらに、蛍光マーカーを有するトランスジェニックES細胞を作製し、キメラ個体作製を試み、生殖細胞への寄与率とPrdm14 KO個体との関係性を調査した。
3: やや遅れている
前核注入によるPrdm14 KO個体作製について、5割を超える効率を達成でき、順調に作製できた。しかしながら、蛍光マーカーを有するES細胞とのキメラ個体を作製する際に、コントロールとしての野生型受精卵とのキメラでさえもES細胞の寄与率が高く、ほぼ全身に寄与するES細胞であった。本研究では比較的緩やかな寄与率のES細胞を用いないと、生殖細胞への寄与率の比較が難しいため、現在ES細胞の継代数を増やす等の工夫をし、緩やかな寄与率のES細胞を作製している。また、ラットES細胞との異種間キメラも試みる。
寄与率の低いES細胞を作製する方法を検討している。本研究では比較的緩やかな寄与率のES細胞を用いないと、生殖細胞への寄与率の比較が難しいため、現在ES細胞の継代数を増やす等の工夫をし、緩やかな寄与率のES細胞を作製している。また、寄与率が低いことが想定されるラットES細胞との異種間キメラも試みる。
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