腫瘍微小環境を二重標的化する革新的薬物デリバリー担体の創製と難治性癌治療への応用

• 研究課題/領域番号: 17K15511
• 研究種目: 若手研究(B)
• 配分区分: 基金
• 研究分野: 医療系薬学
• 研究機関: 熊本大学
• 研究代表者: 前田 仁志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (80791483)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2020-03-31
• 研究課題ステータス: 完了 (2019年度)
• 配分額: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円); 2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円); 2018年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円); 2017年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
• キーワード: がん微小環境 / 腫瘍間質 / マクロファージ / 線維芽細胞 / アルブミン / ポリエチレングリコール / ドラッグデリバリーシステム / 腫瘍関連マクロファージ / 癌関連線維芽細胞 / 薬学

研究成果の概要

がん微小環境の主要な細胞群である腫瘍関連マクロファージ(TAM)やがん関連線維芽細胞(CAF)は、がんの増殖や転移、さらには悪性化や薬剤耐性化で重要な役割を果たしていることから、難治性がんに対する新たな治療標的として注目を集めている。しかしながらTAMとCAFの両者を同時に標的可能な薬物送達(DDS)担体の開発には至っていない。興味深いことに、TAMとCAFの細胞表面上には、それぞれマンノース受容体のCD206とCD280が高発現している。本研究では、TAM/CAFの両者を包括的に標的可能なMono-PEG-Man-HSAを開発し、その有用性を担癌モデルを用いて実証した。

研究成果の学術的意義や社会的意義

近年、モノクローナル抗体医薬をはじめとする分子標的医薬の台頭によりこれまでの低分子有機化合物を中心とした抗がん剤開発から転換期を迎えている。一方で、抗体の生産コストの問題から医療費の高騰が世界的に問題となっており、抗体を用いず低分子・中分子を腫瘍特異的に作用させる技術が望まれる。本発明で用いる薬剤担体は、低分子・中分子と容易に結合させることが可能であり、腫瘍微小環境に存在するTAM/CAFを標的とすることで腫瘍特異的に効率よく抗癌剤を送達することが可能である。さらに本発明は、全世界で抗がん剤開発を行っている企業に対し提供可能な基盤技術であり、技術開示を進め連携・臨床応用を図っていく計画である。

研究成果

• [国際共同研究] Curtin University/School of Pharmacy, Biomedical Science(Australia)
• [国際共同研究] Yale University/School of Medicine/Digestive Disease(米国)
• [雑誌論文] Repeated Administration of Kupffer Cells-Targeting Nanoantioxidant Ameliorates Liver Fibrosis in an Experimental Mouse Model (2020)
  • 著者名/発表者名: Maeda H, Minayoshi Y, Ichimizu S, Mizuta Y, Nagasaki T, Matsusaka K, Oshiro S, Oniki K, Saruwatari J, Ishima Y, Watanabe H, Otagiri M, Maruyama T.
  • 雑誌名: Ｂｉｏｌｏｇｉｃａｌ ＆ Ｐｈａｒｍａｃｅｕｔｉｃａｌ Ｂｕｌｌｅｔｉｎ 巻: 43 号: 1 ページ: 93-101
  • DOI: 10.1248/bpb.b19-00599
  • NAID: 130007779193
  • ISSN: 0918-6158, 1347-5215
  • 年月日: 2020-01-01
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Genetic Fusion of Type-I Interferon to a Recombinant Albumin Mutant with polymannosylated N-linked oligosaccharide attached is a Novel and Superior Kupffer Cell Targeting Agent for the Treatment of Hepatitis. (2018)
  • 著者名/発表者名: Minayoshi Y, Maeda H, Yanagisawa H, Hamasaki K, Mizuta Y, Nishida K, Kinoshita R, Enoki Y, Imafuku T, Chuang VTG, Koga T, Fujiwara Y, Takeya M, Sonoda K, Wakayama T, Taguchi K, Ishima Y, Ishida T, Iwakiri Y, Tanaka M, Sasaki Y, Watanabe H, Otagiri M, Maruyama T.
  • 雑誌名: Drug Delivery 巻: 25 号: 1 ページ: 1067-1077
  • DOI: 10.1080/10717544.2018.1464083
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Design and tuning of a cell-penetrating albumin derivative as a versatile nanovehicle for intracellular drug delivery. (2018)
  • 著者名/発表者名: Ichimizu S, Watanabe H, Maeda H, Hamasaki K, Nakamura Y, Chuang VTG, Kinoshita R, Nishida K, Tanaka R, Enoki Y, Ishima Y, Kuniyasu A, Kobashigawa Y, Morioka H, Futaki S, Otagiri M, Maruyama T.
  • 雑誌名: J Control Release. 巻: 10;277 ページ: 23-34
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Dual Therapeutic Effects of an Albumin-Based Nitric Oxide Donor on 2 Experimental Models of Chronic Kidney Disease. (2018)
  • 著者名/発表者名: Oshiro S, Ishima Y, Maeda H, Honda N, Bi J, Kinoshita R, Ikeda M, Iwao Y, Imafuku T, Nishida K, Miyamura S, Watanabe H, Otagiri M, Maruyama T.
  • 雑誌名: J Pharm Sci. 巻: 107(3) ページ: 848-855
  • 査読あり
• [雑誌論文] Development of Kupffer Cell Targeting Type-Ⅰ Interferon for the Treatment of Hepatitis via Inducing Anti-inflammatory and Immunomodulatory Actions (2018)
  • 著者名/発表者名: Minayoshi Y, Maeda H, Yanagisawa H, Sonoda K, Wakayama T, Hamasaki K, Mizuta Y, Nishida K, Kinoshita R, Enoki Y, Chuang VTG, Koga T, Fujiwara Y, Takeya M, Taguchi K, Ishima Y , Ishida T, Iwakiri Y, Tanaka M, Sasaki Y, Watanabe H, Otagiri M, Maruyama T
  • 雑誌名: Drug Delivery 巻: 印刷中
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Parathyroid hormone contributes to the down-regulation of cytochrome P450 3A through the cAMP/PI3K/PKC/PKA/NF-κB signaling pathway in secondary hyperparathyroidism. (2017)
  • 著者名/発表者名: Watanabe H, Sugimoto R, Ikegami K, Enoki Y, Imafuku T, Fujimura R, Bi J, Nishida K, Sakaguchi Y, Murata M, Maeda H, Hirata K, Jingami S, Ishima Y, Tanaka M, Matsushita K, Komaba H, Fukagawa M, Otagiri M, Maruyama T.
  • 雑誌名: Biochem Pharmacol. 巻: 1;145 ページ: 192-201
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] Development of a novel tumor microenvironment-targeted drug deliver carrier；TAMとCAFを包括的に標的化する抗がん剤デリバリー システムの構築 (2019)
  • 著者名/発表者名: 水田 夕稀、前田 仁志、皆吉 勇紀、一水 翔太、木下遼、異島 優、渡邊 博志、小田切 優樹、馬場 秀夫、丸山 徹
  • 学会等名: 第30回日本消化器癌発生学会総会
  • 国際学会
• [学会発表] がん微小環境を二重標的化する抗がん剤送達キャリアの開発 (2019)
  • 著者名/発表者名: 水田 夕稀、前田 仁志、皆吉 勇紀、一水 翔太、木下 遼、異島 優、渡邊 博志、小田切 優樹、丸山 徹
  • 学会等名: 第44回製剤・創剤セミナー
• [学会発表] がん微小環境を治療標的とするDual targeting 担体の開発と新規がんDDS戦略の構築 (2019)
  • 著者名/発表者名: 水田 夕稀、前田 仁志、皆吉 勇紀、一水 翔太、木下 遼、異島 優、渡邊 博志、小田切 優樹、丸山 徹
  • 学会等名: 日本薬剤学会第34年会
• [学会発表] Development of Kupffer cell targeting nano-antioxidant as a novel therapeutic strategy for nonalcoholic steatohepatitis (2019)
  • 著者名/発表者名: Hitoshi Maeda, Toru Maruyama
  • 学会等名: 第27回韓国応用薬学会
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] 腫瘍関連マクロファージを標的とした新規DDS担体の開発 (2018)
  • 著者名/発表者名: 水田 夕稀、前田 仁志、異島 優、皆吉 勇紀、一水 翔太、木下 遼、渡邊 博志、小田切 優樹、丸山 徹
  • 学会等名: 第34回日本DDS学会学術集会
• [学会発表] 瘍微小環境を治療標的とするDual targeting担体の開発と癌DDS治療への応用 (2018)
  • 著者名/発表者名: 水田 夕稀、前田 仁志、皆吉 勇紀、一水 翔太、木下 遼、異島 優、渡邊 博志、小田切 優樹、丸山 徹
  • 学会等名: 第35回日本薬学会九州支部大会
• [学会発表] アルブミン融合技術を基盤としたクッパー細胞指向性Ⅰ型インターフェロンの設計と肝保護効果 (2017)
  • 著者名/発表者名: 皆吉勇紀、前田仁志、渡邊博志、異島優、小田切優樹、丸山徹
  • 学会等名: 日本薬剤学会 第32回年会
• [学会発表] チオールと一酸化窒素の肝デュアルデリバリーシステムの構築とNASH治療への応用 (2017)
  • 著者名/発表者名: 前田仁志、異島優、皆吉勇紀、一水翔太、柳澤洋輝、渡邊博志、小田切優樹、丸山徹
  • 学会等名: 日本薬剤学会 第32回年会
• [学会発表] 一酸化窒素とチオールを基軸とした新規 NASH 治療法の開発 (2017)
  • 著者名/発表者名: 前田仁志、異島優、皆吉勇紀、一水翔太、柳澤洋輝、渡邊博志、小田切優樹、丸山徹
  • 学会等名: 第17回日本NO学会学術集会
• [学会発表] 腎線維化病態に対する一酸化窒素デリバリーシステムの有用性評価 (2017)
  • 著者名/発表者名: 大城俊、渡邊博志、前田仁志、田中元子、松下和孝、深川雅史、丸山徹
  • 学会等名: 第60回日本腎臓学会学術総会
• [学会発表] 酸化ストレス応答による腎臓内脂肪酸代謝異常を起点とした新規腎病態機序の解明 (2017)
  • 著者名/発表者名: 今福匡司、渡邊博志、佐藤崇雄、前田仁志、田中元子、松下和孝、深川雅史、丸山徹
  • 学会等名: 第60回日本腎臓学会学術総会
• [学会発表] 今福匡司、徳永晃己 、渡邊博志、前田仁志、田中元子、松下和孝、深川雅史、丸山徹 (2017)
  • 著者名/発表者名: カルシウム感知受容体作動薬シナカルセトは副甲状腺ホルモンによる酸化ストレスを抑制する
  • 学会等名: 第70回酸化ストレス学会
• [学会発表] 腎臓内脂肪酸の質的変動に着目した新規腎病態メカニズムの解明 (2017)
  • 著者名/発表者名: 今福匡司、渡邊博志、佐藤崇雄、前田仁志、田中元子、松下和孝、深川雅史、丸山徹
  • 学会等名: 第59回日本脂質生化学会
• [学会発表] 細胞透過型アルブミンの細胞内薬物送達能に関する有用性評価 (2017)
  • 著者名/発表者名: 一水翔太, 渡邊博志, 前田仁志, 濱崎慶輔, 異島優, 小田切優樹, 丸山徹
  • 学会等名: 第33回日本DDS学会学術集会
• [学会発表] マンノース受容体を標的とするナノ抗酸化剤の開発と急性及び慢性肝疾患への応用 (2017)
  • 著者名/発表者名: 前田仁志、異島優、渡邊博志、小田切優樹、丸山徹
  • 学会等名: 第26回DDSカンファランス
• [学会発表] ヘモグロビンを担体とした新規一酸化炭素デリバリーシステムの 非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) に対する有用性評価 (2017)
  • 著者名/発表者名: 柳澤洋輝、前田仁志、皆吉勇紀、田口和明、異島優、渡邊博志、田中基彦、佐々木裕、小田切優樹、丸山徹
  • 学会等名: 第39回生体膜と薬物の相互作用シンポジウム
• [学会発表] 腎線維化病態に対する一酸化窒素デリバリーシステムの有用性評価 (2017)
  • 著者名/発表者名: 大城俊、異島優 、渡邊博志、前田仁志、田中元子、深川雅史、小田切優樹、 丸山徹
  • 学会等名: 第34回日本薬学会九州支部大会
• [学会発表] ヘモグロビンを担体とした一酸化炭素デリバリーシステムの非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) に対する有用性評価 (2017)
  • 著者名/発表者名: 柳澤洋輝 、前田仁志 、皆吉勇紀 、田口和明 、異島優 、渡邊博志 、 田中基彦 、 佐々木裕 、小田切優樹 、丸山徹
  • 学会等名: 第34回日本薬学会九州支部大会
• [学会発表] 副甲状腺ホルモンによるCYP3A発現抑制とその分子機構解明 (2017)
  • 著者名/発表者名: 池上孝明、渡邊博志、杉本龍星、前田仁志、深川雅史、丸山徹
  • 学会等名: 第34回日本薬学会九州支部大会
• [学会発表] 持続型BMP7誘導体の肝線維化モデルに対する有用性評価 (2017)
  • 著者名/発表者名: 高野芽依、渡邊博志、前田仁志、小田切優樹、丸山徹
  • 学会等名: 第34回日本薬学会九州支部大会
• [学会発表] クッパー細胞標的性1型インターフェロンの抗炎症・免疫調節作用を介した肝保護効果の検討 (2017)
  • 著者名/発表者名: 皆吉勇紀、前田仁志、異島優、渡邊博志、小田切優樹、丸山徹
  • 学会等名: 日本薬物動態学会第32回年会
• [学会発表] ヘモグロビンを担体とした一酸化炭素の肝臓デリバリーとNASH病態改善機序 (2017)
  • 著者名/発表者名: 柳澤洋輝 、前田仁志 、皆吉勇紀 、田口和明 、異島優 、渡邊博志 、 田中基彦 、 佐々木裕 、小田切優樹 、丸山徹
  • 学会等名: 第24回 日本血液代替物学会年次大会
• [学会発表] 1型インターフェロンのクッパー細胞デリバリーシステムと肝保護効果 (2017)
  • 著者名/発表者名: 皆吉勇紀、前田仁志、渡邊博志、異島優、小田切優樹、丸山徹
  • 学会等名: 第24回 日本血液代替物学会年次大会
• [学会発表] In silico解析へ向けたα1-酸性糖タンパク質異型間の薬物結合選択性に寄与するアミノ酸残基の同定 (2017)
  • 著者名/発表者名: 中村侑加、渡邊博志、中村照也、池鯉鮒麻美、石躍華奈、前田仁志、山縣ゆり子、小田切優樹、丸山 徹
  • 学会等名: 日本薬学会 第138年会
• [学会発表] エテルカルセチドの適正使用へ向けたアルブミンとのジスルフィド結合解析 (2017)
  • 著者名/発表者名: 今福匡司、田中翔馬、田中元子、松下和孝、前田仁志、渡邊博志、 小田切優樹、丸山徹
  • 学会等名: 日本薬学会 第138年会
• [学会発表] 難治性肝炎をターゲットにする抗酸化ナノDDS戦略の構築 (2017)
  • 著者名/発表者名: 前田仁志、異島優、渡邊博志、小田切優樹、丸山徹
  • 学会等名: 日本薬学会 第138年会
• [備考] Curtin University/STAFF PROFILE
  • URL: https://staffportal.curtin.edu.au/staff/profile/view/V.Chuang
• [産業財産権] 薬物送達用担体 (2018)
  • 発明者名: 丸山徹
  • 権利者名: 丸山徹
  • 産業財産権種類: 特許
  • 出願年月日: 2018
  • 外国