研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、生体中の心筋細胞の単一サルコメアレベルでの局所的なCa2+濃度変化とそれに伴うサルコメアの挙動を同時測定するシステムの構築であり、作製したシステムを用いて健常及び病態モデルマウスのナノレベルでの差異の観測を目指したものである。最初に単離心筋を用いてCa2+濃度とサルコメア長の変化を追跡することに成功したCa2+指示タンパク質を融合させたα-アクチニンをマウスの生体中の心臓で発現させるべく組み替えアデノウイルスベクターの作製に取り組んだ。3つのタイプの融合タンパク質のうちGCaMP3, GCaMP6fを融合したウイルスが作製でき、心筋細胞中でのCa2+濃度に伴う蛍光強度の変化が追跡された。 平行してCa2+指示タンパク質を細胞外から導入し、局在化させる手法の開発に取り組んだ。この方法が成功すれば非常に簡便にIn vivoイメージングを行うことが出来るため、イメージングの研究がさらに発展する技術であると考えられる。細胞中に蛍光タンパク質を導入する手法としては細胞膜透過性ペプチド(CPP)を融合した。いくつかのCPPをタンパク質のNまたはC末に繋いで培養細胞への導入を試したところ、実験で用いた細胞全てにおいて高い導入効率を示すCPPが特定できた。さらに局在化には抗体とそれに特異的に結合するタンパク質(Protein G, A, L)の一部を利用した。Protein G, A, Lの一部を切り出し、タグとして蛍光タンパク質に融合させた。この融合タンパク質を用いて心筋細胞の免疫染色を行ったところ、二次抗体を用いた比較対象に劣らない精度で蛍光タンパク質の局在化が見られた。以上のことからこれらの組み合わせによる新たなIn vivoイメージング手法の実現性および有用性が強く示唆された。
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