研究課題
若手研究(B)
組織内においてWnt/PCP経路は、分泌タンパク質のWntが、組織表面に立ち並ぶ上皮細胞の膜貫通型受容体Fzに結合し、個々の細胞内にシグナル伝達することで、細胞・組織レベルで平面内細胞極性をもたらす。Wnt/PCP経路は組織の軸を決定し、個体の発生や恒常性を制御している。本研究では、Wnt/PCP経路が個々の細胞内で細胞骨格微小管の平面内極性化をもたらす分子機構を解析する。微小管の平面内細胞極性を解析するツールとして、実験・観察しやすい繊毛上衣細胞を用いる。
本研究では、Wnt/PCP経路が細胞骨格微小管の平面内極性化をもたらす分子機構を解明することを目的としている。微小管の平面内細胞極性を解析するためのツールとして、微小管の平面内極性が観察しやすい上衣細胞を用いる。上衣細胞は脳室の表面に1層のシート状に立ち並ぶ多繊毛細胞で、脳脊髄液の流れに沿って波打つ運動性繊毛を持っている。これまでの研究から、繊毛の根元に当たる上衣細胞表層部では、Wnt/PCP経路に関わる分子や微小管が平面内で非対称局在化し、繊毛の向きを制御していると考えられる。本年度までに、脳室壁組織を用いてWnt/PCP分子群のWhole-mount免疫染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡で水平断面を撮影することにより、脳室表面にて平面内で非対称に局在化するWnt/PCP分子やその関連因子を見つけることができた。また、脳室壁上衣細胞の微小管の極性化に関与する分子として、非古典的Wntシグナルの制御分子Dapleを解析してきた。Daple遺伝子欠損マウスの脳室壁上衣細胞では、微小管の平面内極性化がなくなり、基底小体の向きも乱れて繊毛の方向異常となり、水頭症を生じることをこれまでに報告した(Takagishi et al., 2017)。本年度の研究では、Dapleが微小管の極性を制御する分子機構を解析するため、脳室壁組織でDapleと結合する分子を同定し、免疫沈降や免疫染色によって相互作用や共局在を確認した。これらの微小管制御分子のノックダウンや阻害剤によって、微小管の極性化や繊毛方向を解析している。
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PLoS Biology
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Cell Reports
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