研究課題
若手研究(B)
ミトコンドリア鉄代謝異常は酸化ストレスを介して心不全を発症・進展させうるが、詳細は未だ不明な点も多い。本研究では、収差補正走査型電子顕微鏡Titanを用いたエネルギー分散X線分光法(EDS)により、心筋ミトコンドリアの鉄のマッピングを試みた。ドキソルビシン心筋症マウスでは、生化学的手法で定量した心筋ミトコンドリア総鉄含有量が増加していたが、EDSによる鉄のマッピングではミトコンドリアクリステ上には鉄のシグナルはむしろ少なく、特定の領域への鉄の集積や凝集は認めなかった。以上より、ドキソルビシン心筋症ではミトコンドリアにおいて反応性が高く活性酸素産生に関与する遊離鉄が増加していることが示唆された。
本研究により、心筋ミトコンドリアにおける鉄恒常性の破綻を、収差補正走査型電子顕微鏡Titanを用いたエネルギー分散X線分光法 (EDS) により詳細に解析できる可能性が示唆された。これは、患者から得られた心筋生検標本に対しても応用が可能であることを意味する。今後は解析対象を患者心筋生検標本に拡大し、ミトコンドリア鉄恒常性の破綻が治療標的となりうる疾患像を明らかにすることで臨床への応用を目指し、更に研究を進めていく。
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