研究課題
若手研究(B)
口腔外科領域で最も頻度の髙い疾患である顎骨嚢胞の増大と骨吸収の機序としては、古くから提唱されている嚢胞裏層上皮細胞の増殖と嚢胞内容液による圧迫性骨吸収が受け入れられているにすぎず、破骨細胞の活性化やその関与については検討されていないのが現状である。本研究では、顎骨腫瘍、嚢胞による顎骨吸収の分子メカニズムを明らかにするのが目的である。そのために嚢胞上皮細胞と間質線維芽細胞の相互作用に焦点をあて、特に、嚢胞の上皮細胞が産生するサイトカインによる間質線維芽細胞での破骨細胞活性化因子 RANKL発現調節機構と、そのサイトカインによる破骨細胞分化誘導の直接的作用を明らかにしようとした。臨床的に比較的多く認められる顎骨嚢胞のうち特に含歯性嚢胞、角化嚢胞性歯原性腫瘍、エナメル上皮腫に着目して検討を行うこととした。岡山大学倫理委員会での承認を得て患者より病変の組織検体の採取を継続して行った顎骨嚢胞上皮細胞が産生するサイトカイン、特にTGF-βに焦点を絞り、またその他のサイトカインとしてIL-1、IL-6やTNF-αなども顎骨腫瘍・嚢胞内容液中に含まれているという報告があり、顎骨腫瘍・嚢胞の増大にTGF-βを中心として各サイトカインが顎骨吸収に対しどのように影響しているのか、そしてそのメカニズムを明らかにすることを目的とした研究をすすめる予定であった。予備実験では歯原性腫瘍間質線維芽細胞において IL-1αおよび TGF-βはそれぞれRANKL発現を促進させ、TGF-β刺激は IL-1αによる NFκB活性化を増強し、COX2 産生、PGE2合成を促進する間接作用と、 RANKL 転写開始点上流の AP-1 結合領域を介した直接作用の2つによって RANKL 発現を促進させる、という傾向は得ているものの、研究開始1年目で退職することになりそれ以上の明らかな成果は得られていない。