豪雨災害では、復旧作業の困難さや家財道具の廃棄・喪失感などから、被災者への身体的・精神的ダメージが大きいことが指摘されている。豪雨災害被災者の協力を得て実施した研究(平成26年~平成28年度科研費若手B課題番号26861863の助成にて実施)から、被災者の心理的回復や安定を保つ上で、被災後の状況を理解している支援者や家族・友人らの他、同じ被災者の存在が支えとなることが示唆された。被災者へのメンタルヘルス支援として、被災者同士がつながる機会を持つことや当事者同士の支え合い(ピアサポート)の視点が重要になると考えられ、本研究はその支援の検証を目的とした。 支援方法の検討のため、国内外の自然災害後の被災者へのメンタルヘルス支援活動を分析した。国内では、人材確保の困難さや地域格差、中長期的には心理的支援におけるセンシティブな問題への配慮などが課題とされていた。海外では、セルフヘルプやウェブサイトを用いた支援など様々な支援が検証されており、医療資源が乏しい地域や災害後に専門的支援が不足する状況下でも有用な支援となり得るかなどが検討され、被災者にとって利用しやすい形で支援を提供することが重要になると考えられた。 本研究の被災者支援について心理的侵襲を伴わない方法を検討し、実施可能な体制を整えて進める予定であったが、平成30年西日本豪雨の影響が広範囲に及び、対象地域の慎重な選定が必要となり研究の進捗に遅れが生じた。令和2年度に補助事業期間延長の承認を受け他県での調査を計画していたが、COVID-19の感染拡大で研究協力の依頼ができなくなった。また、研究者代表者の家族が病気療養・介護を要する状態となり、その対応のため研究が継続できず、補助事業の廃止を申請し承認を受け、未使用分の助成金を返還した。
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