研究実績の概要 |
T細胞受容体b鎖(TCRb)遺伝子は、多くのV, D, J遺伝子から構成され、最も未熟なCD4/8 Double Negative(DN)胸腺細胞で、VDJ組換えを受けることで多様性を獲得する。これまでに、bHLH転写因子E2AがTCRβ 遺伝子の多くのV, D, J遺伝子に結合し、ヒストンアセチル化の上昇を介して組換えを誘導すること、さらに組換えが成功すると、CD4/8 Double Positive(DP)胸腺細胞へ分化が進むとともに、E2Aがもう片アレルのV領域から解離し、さらなる組換えが抑制されることがわかった。 E2Aの組換え誘導機構をさらに解明するため、E2Aの核内局在を調べたところ、VとDJ領域が接近し、組換えが起こるCD4/8 DN細胞では、E2Aが核内でドット状の構造体(E2A foci)を形成していた。一方、VとDJ領域が離れ、組換えが抑制されるCD4/8 DP細胞では、E2A fociの数が減少することがわかった。そこで本研究では、E2A fociの形成と、VとDJの接近が関連する可能性を考え、免疫染色と3D DNA FISHを組合わせたImmuno-FISH解析を行った。 Immuno-FISH解析により、DN細胞ではE2Aがfociを形成し、E2A fociの近傍でVとDJ領域が接近するのに対して、DP細胞ではVとDJ領域が離れ、さらに減弱したE2A fociからも離れることがわかった。E2Aを過剰発現させるとDP細胞でもE2A fociが増加し、VとDJ領域が接近する傾向を認めた。 以上の結果から、E2Aは fociを形成することでTCRb遺伝子のVとDJ領域を接近させ、遺伝子再構成を誘導することが示唆された。
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