研究成果の概要 |
財政政策や規制緩和・民営化政策に関して, 3点の研究を行った. 1点目は, 財市場競争が熾烈になるとき, トレンド経済成長率は高まる一方, 経済変動の不安定化を招く恐れがあることを理論的に指摘した. 2点目は, 公企業と民間企業が競合している混合寡占市場のマルコフ完全ナッシュ均衡解の特徴付けに成功し, 民営化の程度と均衡価格についての非単調関係が存在すること, 最適民営化度合いが他均衡概念における結果と比較して顕著に高くなることを明らかにした. 3点目は, 財市場競争と労働市場競争の相互作用について, 長期的な見地で分析を行った.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
最近の研究成果から, 長期的なマクロ経済政策を考察する際に, 市場構造の変化に伴う二次的効果を通じた生産・投資活動への間接的影響が, 政策含意に大きな影響を与えることが示されている. また, 産業組織論の既存研究では, 動学的視点を踏まえた市場構造の変化についての研究蓄積が乏しいことが指摘されている. 本研究は, 上記の学術的背景から, マクロ経済学と産業組織論双方の知見を有機的に結び付け, 財政政策, 規制緩和・民営化政策の政策含意を分析する点に大きな特色・独創性を持つ. また, マクロ経済学と産業組織論で個別に議論されているその他の経済諸問題への応用可能性を示唆することも期待される.
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