研究課題
挑戦的研究(萌芽)
ホヤの受精において、精子プロテアソームが細胞外で卵膜ライシンとして機能することを報告しているが、その局在性や活性化機構には不明な点が多い。本研究ではまず、マボヤ精子膜画分抽出物中に、確かにプロテアソームが存在することを免疫沈降法と質量分析で再確認した。しかし、共沈降される相互作用成分の同定には至らなかった。また、有性生殖への関与が指摘されているPA200のTALEN法による遺伝子破壊を行なったが、ホヤでは胚発生異常を引き起こすことが判明した。一方、受精阻害実験から、金属プロテアーゼがホヤの受精に関与することが示され、プロテアソームとともに卵膜ライシンとして機能する可能性が示唆された。
申請者は、受精実験が容易な脊索動物マボヤを用いて、その受精に精子ユビキチン-プロテアソーム系が関与すること、特に細胞外で卵膜ライシンとして機能することを初めて明らかにした。その後、哺乳類や鳥類や棘皮動物でも同様の現象が確認され、新口動物に共通するシステムであると考えられる。一般に、プロテアソームは細胞内のタンパク質分解で重要な役割を果たすが、細胞外での機能は不明な点が多い。しかし、近年、神経疾患等で細胞外プロテアソームが注目されつつある。本研究は、受精に関わる精子プロテアソームの細胞外での機能と輸送機構に焦点を当てた研究であり、不妊症診断治療薬の開発に繋がりうる基礎研究といえる。
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