研究課題/領域番号 |
17KK0142
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
生態・環境
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 東京大学 (2020-2021) 東北大学 (2017-2019) |
研究代表者 |
小口 理一 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (10632250)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2023
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
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キーワード | 種内変異 / 生態学 / 温度依存性 / 可塑性 / 適応 / 順化能力 |
研究実績の概要 |
強すぎる光は光合成器官に傷害をもたらし、光阻害と呼ばれる光合成や成長の低下を引き起こす。これまでに植物の多様な光阻害回避機構が報告されており、植物がそれだけ多くの光阻害回避機構を進化させてきたことは、光阻害耐性にそれだけ強い淘汰圧がかかってきたことを示唆するが、光阻害が種の分化・分布にどのように影響してきたかという知見は乏しい。本研究では、光阻害回避機構のうち、温度依存性があり、近年急速に研究が進んできた、光化学系I循環的電子伝達およびステート遷移能力の温度依存性にエコタイプ間で生育地の気温との相関が見られると仮説を立て、検証を行っている。世界各地で集められたシロイヌナズナエコタイプの種子をシロイヌナズナリソースセンターから取得し、共通圃場で生育した植物を、 温度制御が可能なチャンバー内に入れ、複数の葉温で光化学系I 循環的電子伝達および光化学系I/IIステート遷移能力を測定している。受入研究者であるオーストラリア国立大学のChow教授には、材料の生育と測定について協力頂いている。ウロンゴン大学のOsmond教授には測定機器の使用および測定で協力頂いている。 昨年度までに低温での光化学系I循環的電子伝達速度およびステート遷移応答速度とエコタイプの由来地の気温との相関が観察されており、これらの光阻害回避機構について低温で高い活性を保つ能力を獲得できたかどうかが集団の分化・分布に影響したことを示唆している。2022年度はようやく新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いたため、共同研究先に2ヶ月間渡航することができたが、3年弱のブランクがあったために、使用予定であった植物材料や研究機材が使用できないなどのトラブルが生じた。しかしその中で、光阻害耐性に関わる新たな実験を行うことができ、光化学系のアンテナサイズの応答と光阻害の関係に新たな知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
期待していたエコタイプの由来地の環境との相関が見られているものの、3年間を通して120エコタイプの測定を予定していた中で、2年間で61エコタイプでの測定が終了した段階であった。ターゲットとなるサンプルの同時測定数を増やすために1年目で使用した自動方向制御装置を、2年目でも使用予定であったが、使用できない不具合が生じた事が理由であった。また、3年目、4年目であった2020、2021年度は新型コロナウイルスの世界的な蔓延のため、共同研究先であるオーストラリア国立大学に渡航できなかった。5年目となる2022年度の後半になり、ようやくオーストラリア国立大学に渡航できたものの、3年近い中断が生じたために、使用予定であったエコタイプや測定機器が使えないなどのトラブルが生じたため、測定や解析の一部が完了しなかった。そこで研究期間の延長を行い、国内でも測定や解析を行って補完する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
予定していた共同研究先であるオーストラリア国立大学への計6ヶ月の渡航は完了したが、新型コロナウイルスの世界的な蔓延のために2ヶ月の滞在を3年間連続で行う予定であったところが、途中で3年弱の中断が生じてしまった。それが原因で、使用予定であった植物材料や測定機器が使えないなどのトラブルが生じたため、測定や解析の一部が完了しない事態になったことから、国内でも測定や解析を行って補完する予定である。
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