研究課題
特定領域研究
本研究では、これまでの知見をもとに、独自に開発した分子シャペロン機能を有する疎水化多糖による自己組織化ナノゲルを用いて、癌治療における新しいDDSの設計とその応用を目的とする。IL12-ナノゲル複合体を用いた免疫療法:インターロイキン12(IL-12)は、高い抗腫瘍効果を持つサイトカインの一つとして注目されている。しかしながら、サイトカインを用いた免疫療法においては、その短い半減期に示される生体内での不安定性や、大量・反復投与による副作用などが、有効な抗腫瘍効果を得るための障壁となっている。IL-12の徐放性キャリアとしてのコレステロール置換プルラン(CHP)ナノゲルが有用であることを明らかにしてきた。本年度は、長期徐放性を実現するためにナノゲルを集積架橋した新規ナノゲル架橋微粒子(-200nm)の調製法の確立に成功した。IL-12含有ナノゲル架橋微粒子を調製し、マウス皮下投与後のIL-12の血中滞在濃度を調べたところ、ナノゲル系が24時間でその血中濃度がほぼなくなったのに対して、架橋ゲル系では72時間後でも比較的高い濃度を保っていることが明らかになった。新規タンパク質徐放システムの開発に成功した。ナノゲルによる癌免疫タンパクワクチン:タンパク質癌ワクチンの開発においては、抗原タンパク質を樹状細胞などの抗原提示細胞へいかに効率よく輸送し、キラーT細胞やヘルパーT細胞を誘導しえるかが大きな課題である。CHPナノゲルは、erbB2抗原タンパク質と安定な複合体ナノ微粒子を形成し、それを担ガンマウスの皮下に投与したところ、抗体を産生するヘルパーT細胞のみならず、抗腫瘍性のキラーT細胞が効率よく誘導され、癌免疫療法として有効に機能することを明らかにしてきた。本年度は、HER2抗原をナノゲルと複合化したワクチンをヒトに投与し、その有効性を調べたところ、ヘルパーT細胞および抗腫瘍性のキラーT細胞の誘導が癌患者においても確認されその有効性が実証された。
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