研究課題
特定領域研究
細胞接着斑蛋白質Hic-5をコアとする細胞質-核シャトル複合体が担う足場依存性増殖の制御機構を明らかとした。Hic-5は通常、細胞接着斑から核に移行し、CRM1核外排出機構によって細胞質へ排出される。一方、cyclin D1 (D1)もCRM1に依存して核外へと排出されるが、通常の接着細胞内ではHic-5がD1の核外排出に競合するため、D1は核内に局在している。この競合メカニズムについては、酵母two-hybrid法を用いて、D1とHic-5が、両者共通のアダプター蛋白質PINCHを介して、実際CRM1への結合に対して競合することを示した。一方、細胞を浮遊させると細胞内の活性酸素(ROS)産生が高まるが、Hic-5の核外排出はROS感受性で、浮遊細胞内では産生されたROSによってHic-5は核外排出不能となり、D1の核外排出に対する拮抗機能も失う結果、D1が代わって細胞質へと排出されることがわかった。浮遊細胞の核にD1を強制的に局在させる、もしくは特異的システインに変異を導入してROS産生に関わらず核外排出可能なHic-5を細胞内に導入すると、細胞が浮遊状態でも生存可能となり、増殖の足場依存性を喪失した。したがって、Hic-5によるD1の接着依存性核局在化機構は、細胞の足場依存性増殖の安全装置として機能してると考えられた。活性化rasの導入によってD1は足場の有無に関係なく核に局在するようになり、rasによる足場非依存性増殖誘導に寄与していた。
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