研究概要 |
一般的にGISTの発生頻度は人種に関わらず10万人に1-2人と考えられてきた。しかし平成18年度までの検索で、胃癌で全摘出された胃100症例のうち、35症例50病変の顕微鏡的GISTが存在することを明らかにした。その一部には既にGIST発生の原因遺伝子と考えられているc-kitの変異が生じていることも見出し、高頻度に発生する顕微鏡的GISTから臨床的GISTに進展するにはc-kit遺伝子変異に他の遺伝子変化が加わることが必須であると考えた。この遺伝子変化はこれまでの検討で悪性度に関わらずGISTで高頻度に欠失の見られる1p,14q,22q上のある癌抑制遺伝子であると推測されたことより、平成19年度は、この領域に限定した超高密度micro arrayをデザインし、通常、臨床的には切除対象とならない2cm以下〜相対的切除適応である3cm前後までのvery lowないしlow risk GIST13例、c-kit遺伝子exon13に変異のあるGIST cell line、およびc-kit,PDGFRA遺伝子変異を伴わないNF1に合併して発生したGIST 1症例の解析を行っている。まだpreliminaryな解析ではあるが、14q、22qの複数の領域における欠失が、特に3cm以上のGISTにおいて生じている傾向がある。臨床的にも3cm以下の粘膜下腫瘍はほとんどは大きくならず、これらの欠失が段階的に生じている結果に合致する。同様の欠失はNF1合併GISTには見られず、異なるメカニズムにより発生していると考えられた。今後さらに症例の追加解析と、あらたに抗5-メチルシトシン抗体を用いた免疫沈降によるメチル化DNAの濃縮とタイリングアレイによる解析を組み合わせた網羅的なプロモーター領域異常メチル化の検索を行うことにより、1p,14q,22q上に存在すると推測されるGIST発生に関与する癌抑制遺伝子を特定する。
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