研究概要 |
本研究は近未来的に,TNFによる"がんに対する蛋白療法や遺伝子療法",がんワクチン療法における"宿主抗腫瘍免疫応答のさらなる賦活化を目的としたTNF投与",TNFの選択的ながん組織血管の透過性亢進作用を利用した"がん化学療法剤の腫瘍組織への効率的デりバリー"など,がん治療領域におけるTNFの可能性を開拓しようとするものである。本年度は,さらに抗腫瘍活性と安全性に優れたTNF-R1指向性スーパーアゴニストの創出を目指し,我々が独自に開発してきた機能性人工蛋白質作製法をシステムアップする手法として,ファージ表面提示法と遺伝子シャッフリング法とを融合した,シャフリングライブラリ法を新規に確立し,以下の結果を得た。1)既存のファージ表面提示法では不可能である,10個以上のアミノ酸を置換した構造変異体ライブラリを作製することに成功し,これまでの多様性をはるかに上回る,膨大なレパートリーの中から目的とする構造変異体をスクリーニングできる方法論を確立した。2)作製したシャッフリングライブラリを用いることで,既存のTNFR1指向性変異体と比較して,生物活性において約7倍以上,指向性において約13倍以上,優れたアゴニストTNFを得た。またTNFR2指向性変異体においても,指向性において約15倍以上,生物活性において約2.5倍以上優れたアゴニストTNFを得た。これらは,現存するレセプター指向性のTNF変異体の中で,最も活性と指向性に優れた毛のである。今後,これらTNF変異体を有効活用し,TNFによるがん治療の最適化を推進していく予定である。
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