研究課題
特定領域研究
シンビオジェネシスの過程では、一般に、細胞内共生者から宿主核への遺伝子移動が生じる。本研究の目的は、この過程で生じるプロモーター獲得の一般的な原理を明らかにすることである。本年度の具体的な研究成果を以下に示す。(1)CT-MPSS法を用いて、シロイヌナズナの転写開始点(TSS)をゲノム上に約16万マップした。これは植物のTSSデータとしては世界最大規模であり、かつ、定量的な解析のできる唯一のデータセットである。(2)上記のTSSデータを解析したところ、シロイヌナズナのコアプロモーター領域では、ヒトやマウスのコアプロモーターにはみられない配列要素やコンテキストが使われていることが明らかになった。さらに、動物ゲノムでの転写開始領域に頻出するCpGアイランドがシロイヌナズナでは見出されず、動物のCpG配列に相当するニッチを植物ではピリミジンに富んだ配列が占めていることがわかった。(3)本研究によって蓄積されつつある植物の転写開始点とプロモーター配列の情報を一般に公開するため、Ppdbと名付けたデータベースを作成した。2007年6月末からの半年間で、世界49カ国から約100,000件のアクセスがあった。(4)ヒメツリガネゴケのTSS/プロモーターデータを解析してPpdbに収録する作業を、基生研の長谷部先生のグループと共同で進めた。また、東大の佐藤直樹先生と共同して、植物オルソログ遺伝子プロモーターの比較解析を進めている。(5)非常に微弱な転写活性しか見られなかったゲノムの領域に「プロモーターの無いマーカー遺伝子」が挿入されると、その領域からの転写物レベルが大きく増大する事例が見出された。この現象のメカニズムを実験的に検討したところ、「下流の構造遺伝子配列」が「コアプロモーター領域」の位置を決定するシス因子として作用している可能性が示唆された。
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http://ppdb.gene.nagoya-u.ac.jp