研究概要 |
本研究では、Y染色体のゲノム進化の様相と染色体機能の関連性を明らかにすることを目指して、哺乳類の性染色体の比較ゲノム解析を行った。ヒトとチンパンジーよりも生物進化上、距離の離れた7種の哺乳類について、X-degenerate region, Y-ampliconic region, X-degenerate regionに対応するX染色体領域の3領域についてゲノム構造解析を行なった。 解析対象生物7種の哺乳類のうち、オランウータン、ニホンザルについては、Y染色体由来のBACクローンを単離し、クローン地図の作成を進めた。イヌについては、Y染色体上のX-degenerate regionに位置する3つのBACクローンの高精度配列決定を行ったが、その結果、3つの遺伝子ZFY、DDX3Y、USP9Yの存在が明らかになった。これら3つの遺伝子領域のゲノム配列と、既に公共データベースに登録されていたヒト、チンパンジー、マウス、ラットのcDNA配列を用いて遺伝子領域の相同性検索を行なったところ、DDX3Y、USP9Yは種内における性染色体間(X-Y)における配列相同性よりも異なる生物種間(X-X,Y-Y)の配列相同性が高かったが、ZFYについては異なる生物種間(X-X,Y-Y)よりも種内における性染色体間(X-Y)の相同性が高く、この遺伝子を含むゲノム領域において、進化の過程で性染色体間のGene conversionが起こったことが示唆された。今後、これらの領域を対象に、他の生物種についても詳細なゲノム構造決定を進め、X-degenerate regionのゲノム進化の様相を明らかにするとともに、これらの遺伝子が関与する表現型や性染色体機能と遺伝子構造、ゲノム構造の関連性を明らかにしたいと考えている。
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