研究概要 |
環境中に存在する細胞数の少ない磁性細菌からもゲノム情報を獲得することを目的として、全ゲノム情報の明らかにされている磁性細菌Magnetospirillum magneticum AMB-1 株を用いて、MDAによるゲノム増幅の検討を行った。フローサイトメトリーによって細胞数を正確に分取したサンプルについてMDAを行った。得られたMDA産物に対する増幅について、qRT-PCRを用いた各遺伝子のコピー数から定量的に評価を行ったところ、ゲノムワイドに分布する8個の遺伝子(mms6,mms7,mms13,mms24, mamJ,argK,mpsA,magA)のコピー数の相対比から、各遺伝子が均一にMDAによって増幅されていることがわかった。そこで、多様な細菌が観察された環境サンプルを使用してMDAを行い、増幅産物のshearingによる断片化処理後、BACベクターにクローニングを行った。得られたライブラリーの平均インサートサイズは、約7.5 kbであった。次に、バイオナノマグネタイト合成に関与する遺伝子群の探索を行った。その結果、結晶形成に関与するタンパク質をコードする遺伝子mms6と相同性を持つ新規遺伝子が同定され、Mms6のN末端領域に相当する遺伝子配列において塩基置換が確認された。一方で、C末端領域には塩基置換は見られず、本領域の高い保存性が確認された。同様に、mms7に相同性を持つ遺伝子も得られた。さらに、16S rDNAに基づいた分子系統解析を行ったところ、顕微鏡観察結果と一致するMagnetospirillum属、及びMagnetococcus属の細菌が同定された他、新規と考えられる磁性細菌の存在が確認された。また、Magnetococcus属は大きく4つのクラスターに分類されることが新たに明らかにされた。
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