研究概要 |
Bifidobacterium adolescentisは,成人大腸内で最優性のビフィズス菌である。この菌種は,多くの多型が存在し,人ごとに異なる株が常在化していると考えられる。我々はこれまでに,この基準株であるB.adolescentis ATCC15703株の完全長ゲノムを決定した。今回は,菌株間の多型を解析することを目指し,JCMの保存菌6株(JCM1251,1275,7042,7044,7045,7046)と健康な6人の成人から分離された菌株の計12菌株のB.adolescentisを対象に,CRISPRの多型解析,7base間隔で29marプローブを用いたタイリングアレイによるゲノムワイドの多型解析を行った。 解析を進めた結果,タイリングアレイ解析より,B.adolescentisの菌株間で,基準株と解析した5菌株を比較したときに,共通して欠失している遺伝子が118個確認された。B.adolescentis菌株の分岐において,この欠失した118個の遺伝子が大きく関係していると考えられる。さらにこの118個の中に,11個の連続欠失領域が確認された。この11個の領域は,CRISPR,細胞表層の糖鎖合成系,トランスポーターの遺伝子クラスタであることが示された。これらの欠失が菌株間の多様性,個性の発現に密接に関与していることが推察された。 またSOMを用いて解析した結果,B.adolescentisの基準株は,他の生物種からの遺伝子の挿入によって成立していったことが新たに分かった。そして,その成立した始祖株からの主に遺伝子の欠失によってB.adolescentis菌株に分岐していったことが示唆された。これらの結果より,B.adolescentisが定着している腸内環境に応じて進化していると考えられた。
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