研究概要 |
ミレニアム・プロジェクトで進めた候補遺伝子によるゲノム網羅的な高血圧感受性遺伝子解析の成果について、世界的にも有数の700例ずつの高血圧/正常血圧サンプルや14,000例を超える大規模サンプルを用いて更に検討を進めた。具体的には、これまでに見いだした高血圧と強く相関する遺伝子AのSNP-1(p=0.052(オッズ比=1.13))について前後50kbのファインマッピングを進め、10-6レベルの相関を示すSNP-4(オッズ比=1.37を得た。14,00例の集団サンプルによる検討では、高血圧に対する粗オッズ比はヘテロ型で1.15(1.02-1.29)、ホモ型で1。23(1.09-1.38)であった。年齢、性、BMIを調整した検討では、それぞれヘテロ型、ホモ型のオッズ比は、それぞれ1.18(1.03-1.35)1.30(1.13-1.48)であった。さらに、中性脂肪、血糖、HDLコレステロール、喫煙、日本換算飲酒量などの高血圧の主なリスク因子を調整した上でも、SNP-4は高血圧の独立した危険因子であった。遺伝子多型ごとの平均収縮期血圧(降圧薬服用者含む)は129.4±19.2、131,3±19.7、132.4±20.0mmHg(p=8.6*10-7)と、アレルあたりおよそ1.5mmHgの上昇と相関した。拡張期血圧については、同様に77.4±11.1、78,3±11.6、79.0±11.9mmHgとアレルあたりおよそ0.75mmHgの上昇と相関した。平均収縮期血圧で3mmHgの低下は脳卒中死9.6%(約14,000人)罹患者数では約30,000人の減少に比例することから、当該SNPの臨床的意義は極めて大きいといえる。引き続き遺伝子Aおよびその産物(タンパク質)の機能解析を進めて血圧との相関を明らかにするとともに、別に有意性を示した遺伝子の解析を進めることで、高血圧の遺伝的背景の明確化を目指す。
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