研究概要 |
メナキノン(ビタミンK)は,人間にとっては血液凝固に必要なビタミンであり,また微生物では電子伝達系成分として生育に必須である。申請者は,胃潰瘍・胃がんの原因菌として知られているHelicobacter属細菌、食中毒原因菌として知られているCampylobacter属細菌,グラム陽性の土壌細菌であるStreptomyces属細菌などの微生物では,既知の生合成経路として知られているコリスミ酸からメナキノンに至る5ステップの生合成遺伝子群が全く存在しないことに気づいた。そこで,この新規経路の全容解明を行っている。 1.これまでにStreptomyces属放線菌を材料に用いて,バイオインフォマティクスにより絞り込んだ遺伝子を破壊することにより,7つの遺伝子群が新規経路に関与することを明らかにした(これらの成果については未発表のため,これら遺伝子群を以下men06,men26,men27,men50,men90,men92,men94と略号で記載する)。 2.また新規経路遺伝子の網羅的取得を目指し,変異剤によるメナキノン生合成欠損株の誘導と相補遺伝子の取得も行った結果,新規経路は既知経路同様コリスミ酸を出発基質とするが,その後全く別経路を経ることも分かった。 3.上述の破壊株を2つ組み合わせてメナキノン非存在下で混合培養を行った結果,幾つかの菌株の組み合わせで生育が認められた。本現象を利用し,破壊株が関与する生合成上の相対的な位置を(men06)→(men26,men27,men50)→(men90,men92,men94)→メナキノンのように明らかにすることができた。 4,上述したアッセイ系を用い,破壊株が蓄積する中間体の精製・構造決定を行い,3つの化合物の構造を決定した。
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