研究概要 |
1,遺伝子転写制御の網羅的解析 対数増殖期と定常期の野生株およびMDP1欠失株からRNAを抽出し,Mycobacterium smegmatisMC^2155株全遺伝子を標的としたDNAマイクロアレイ解析を行った。対数増殖期から定常期にかけて,既知遺伝子中,181遺伝子が増減し,そのうちの99遺伝子の発現が減衰,82遺伝子が上昇していた。野生株とMDP1欠失株の発現を比較することで,MDP1は既知遺伝子中,171遺伝子の発現制御に関わり,134遺伝子の発現抑制と34遺伝子の発現増強に関わることが明らかになった。特筆すべき点としては,定常期において高分子合成に関わる酵素の発現が終息するが,その終息にMDP1が強く関わることが判明した。 2,蛋白質発現調節の網羅的解析 野生株,MDP1の欠失菌,MDP1入れ戻し株の蛋白質発現パターンの違いを二次元電気泳動により比較した。MDP1欠失株は定常期以降死滅しやすく,Mycobacterium smegmatisの死滅にともない顕著に増加する蛋白質二種が認められた。質量分析により細胞壁合成に関わる脱水素酵素と分子シャペロンであった。また死滅以前にMDP1の欠失により顕著に発現変化のみられる蛋白質が少なくとも複数あることが蛋白質二次元電気泳動によっても判明した。アルコール脱水素酵素など,転写レベル(マイクロアレイ)の解析と一致するものとそうでないものが存在した。
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