研究概要 |
ハンセン病は,WHOが推進する多剤併用療法により減少傾向にあるとはいえ,2007年における世界での新患発症数が20万人を超える重要な感染症である。また,起因菌であるらい菌は,長い研究の歴史があるにもかかわらず未だ試験管内培養が出来ないことなどから病原性などに関する研究も進んでいない。そこで,らい菌に発現する全RNAを網羅的に解析し,らい菌における機能遺伝子および非翻訳領域由来RNA発現と病態との関連について明らかにすることを目的として研究を行った。具体的には,変性の強いらい菌由来mRNA精製の精度を上げると同時に,アレイに用いるプローブ長を長くすること,cDNAの標識方法を改良すること,およびらい菌ゲノム全域をカバーするタイリングアレイと全ての翻訳領域をカバーするアレイの2種類を用いて結果を比較することなどの検討を行った。また,得られたデータかららい菌で発現頻度の高い遺伝子の機能予測を行うとともに,他の抗酸菌との比較を行った。らい菌ゲノム全域にわたるタイリングアレイを作製し遺伝子発現解析を行った。その結果,偽遺伝子および非翻訳領域由来RNAの多くが高レベルで発現していることが明らかとなった。さらに,これらの偽遺伝子や非翻訳領域由来RNAの発現パターンは症例によって異なっていることや,一部のRNAは治療後早期に消失することなどが明らかとなった。すなわち,患者由来の菌に発現するこれらRNA発現パターンを調べることで,病態との関連や予後の予測に用いることが出来る可能性とともに,そのレベルをモニターすることが治療効果の判定に有用である可能性が示された。
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